Sランクの男は如何でしょうか?【R18】※番外編更新中

キミノ

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第2章

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 材料は何も無いというのはどういう事なのかと言うと、つまり調味料は信じられないくらいあるという事。

 広い冷蔵庫にはお味噌からコチュジャン、ナンプラーにジュノぺーゼなど国にとらわれない多彩なラインナップだった。正直、なんと書いてあるかも読めないものが大多数だった。戸棚を開いてもグラスばかりが並んでおり、呆れかえった頃にまた調味料が出てきた。これもお塩から色んな種類のオイル、違いの分からない葉っぱなど様々だった。


 さて何を作ろう。


 完全に沙也加の詰みであった。詰みとは将棋やボードゲームの用語の一つで、完全に捕獲された状態を表す。つまり、沙也加の負けである。

 思いつくのは、お出汁と味噌で作るアレ・・しか思い浮かばなかった。








 さて。出来たのはいい。味も良い。問題はたった一つであり、最重要の問題だった。


 具がない。


 こんなもの、ただの汁であってご飯ではない。自分でも重々承知であるが、もうこれしか思いつかないのだ。こんなもの出したら、また貴臣さんに冷ややかな目で見られてしまう。そんなの居た堪れない。料理はわりと得意なほうの沙也加ではあったが、ここでは勝率が無さすぎた。

 時刻は午後十時を過ぎたが貴臣が帰ってくる様子は無かった。ごろりとソファに寝転ぶと思い出すのは、三日に一度は必ず連絡を取っていた母の姿だった。





*****


『もしもし? お母さん? 元気?』

『はいはい。たった二日じゃくたばらないわよ』

『そうだね。今日も一日ハッピーだった?』

『もちろんよ。沙也加が元気に今日も仕事をして、たくさんのお客さんを笑顔にしたんだと思うと、お母さん疲れなんて吹っ飛んじゃうよ』

『そんな、大げさだよ。私は事務員だからね』

『あはは、そうね。でもお母さんは沙也加がハッピーでいる事が、一番のハッピーなの。お母さんと電話してないで、沙也加は大切な人を見つけてその人の一番の元気の素にならなきゃね』

『ふふ。いっつもうるさいよ』

『さ、お母さんはドラマを見るから、沙也加はちゃんとメイク落としてから寝るのよ。おやすみ』

『もう、私は子供じゃないよ。おやすみなさい』

『明日もハッピーな一日が沙也加に訪れます様に』ツーツーツー


*****



 母は何よりも私を優先してくれる最高の母親だった。


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