Sランクの男は如何でしょうか?【R18】※番外編更新中

キミノ

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第1章

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 しっとりとした艶感のある黒髪が揺れて、前髪の隙間から切れ長の瞳がこちらを見下ろしていた。パーマのかかった長めの髪はセンターで分けられ、貴臣の色気をより際立たせている。猫のような瞳は奥二重で、スッとした鼻筋は外国人かと疑ってしまう程だった。

「そう、見惚れるな」

 貴臣の薄い唇が悪戯に弧を描いた。その笑みは彫刻にして美術館に飾るべきだと、声を大にして言いたくなる程に貴臣は美しかった。

「えっと・・・」

 変態の気持ち悪い男だと思っていた。だから、こんな人がまさかという驚きは半端なものではなかった。貴臣は気分を良くした様で、右の口角だけ吊り上げたまま早足に歩みを進めた。




 沙也加は人形のように抱えられたまま無駄に広いトイレに到着し、自分がトイレに行きたかったのだと思い出した。

「馬鹿でも使い方くらいわかるだろ?___手伝って欲しいなら、這いつくばって頼むが「けっ、結構です」

 貴臣をトイレから追い出し、急いで扉を閉めると大きな溜め息が出た。

 自分の置かれている状況が今だに把握出来ない。変態ストーカーがまさか、S 級リッチなイケメンだったとは到底思えないのだ。

 うるさく鳴る鼓動を整えようと、白く磨き上げられた洗面台に手をついた。水垢一つ無い鏡面には普段と変わらぬ冴えない自分の顔が映しだされており、ぼさぼさの髪は今の気持ちを表現していた。頬は薄っすらと色付き、唇は少し腫れてぽってりとしている。

 仕事着を着ていたはずなのに今は、白色の高そうな生地のシャツに変わっていた。貴臣に着替えさせられたかもしれないと思うと、不純にも胸が高鳴ってしまった。相手がイケメンだと分かった瞬間から、されたこと全ての印象が変わってしまっていた。不純だと言われてもしょうがないじゃない。相手は誰もが振り向く絶世のイケメンである。

 沙也加は取り合えず用を足してはみたものの、出ていく気になれずにいた。




 ドンドンドン

「おい。何時まで待たせるつもりだ」

 忙しなくドアが叩かれ、答える間もなくドアが開かれた。

「え?! 鍵は・・・」

「外からでも開く」

「・・・意味ないんですね」

「いちいちうるさい女だ。来い」

「わあっ」


 貴臣は決して軽くはない沙也加の身体を、米俵の様にひょいと肩に担いだ。不安定な体勢に貴臣のシャツを咄嗟に掴むと、それが合図だったかの様に貴臣は歩き始めた。



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