上 下
55 / 136
第5章 勇気と恐怖

5–3

しおりを挟む
「ところで、調査の方は順調なの?」
「ああ、進展があったから団長と一緒に報告に戻ってきたんだ」
「ってことは、舟堀の街の人達の行方が分かったの?」
ヒロは困った顔をした。
「分かったと言えば分かったのだが、更に厄介な問題が発生して・・・」
何だか歯切れが悪いな。これ以上に厄介な問題があるのか。
「とにかく、ここからは騎士団の問題でホイホイと話せることじゃなくてね。悪いな」
「まあ、そういうことなら仕方ないな。騎士団の仕事頑張れよ」
そう言うと、ヒロは城の方に向かって行った。
「ヒロ君が言ったこと気になるね。更に厄介な問題って」
「僕らのこの状況以上に厄介な問題なら勘弁してほしいけどな」
ジュンは冗談っぽく言って笑った。本当はこの状況はお互い辛いのに、笑うことで辛さを和らげようとしてくれていることにルイーザは気づいていた。お互いの為に、そして始まりの異界を見つける為に頑張ろうと思った。
リハビリは次の日、また次の日と続く。進展がないまま更に数日が経った。
その日もリハビリによる進展は特に無かった。そして夕方、城下町の食堂でご飯を食べていると妙な噂を聞いた。
「なあ、知ってるか?最近、多くの兵士やギルド関係の者が行方不明になってるらしいぞ」
食堂で相席してる人が言うに、数日前に掴んだ国の情報からある場所に兵士達を送っている。ただ、そこから帰ってくる者がいないそうだ。
「国はどこに人を送ってるんだろうね?」
「王国兵士なら何か知ってるかもしれないが、ギルド関係者はなぁ・・・危険任務だからある程度実績がある奴らじゃないと引き受けられない任務らしいから情報が全く来ないんだよな」
男は複雑そうな心境だ。実績のある隊のみが受けられるクエスト。それを受けれるのは、実力をギルドに認められたということだ。危険なクエストでも受けたいというのが心情である。しかし、明らかに危険なクエストで命は落としたくない。受けたいけど、どこか受けたくない気持ちがある。矛盾した感情だ。
難易度の高いクエストだ。ギルドとしても実績のない人達を安易に送り込みたくはないだろう。
仮に受けたいと思ったとしてもジュン達のルイーザ探検隊はまだ作ったばかりの新米だ。当然、引き受けることはできない。2人にとっては縁もゆかりも無い任務だ。
とは言え、行方不明者続出してる任務。引き受けることはできなくても心配ではある。
「本当に大変そうな任務なんだね。行方不明の人は無事でいるといいね」
「ああ、そうだな。噂じゃ、この任務次第で国の命運も決まるとかいう噂だ。クエストクリアすれば名実共に大きく上がるだろうね」
そう言うと、相席していた人は去っていく。ジュンとルイーザはさっきの話題について話す。
「流石、王国のギルドだね。色々な情報がすぐに入るね。行方不明者続出のクエストか・・・」
「その辺りの話はヒロ君が何か知ってるんじゃない?」
「とは言え、話してくれるかね?」
「無理だとしても聞けるかどうか試す価値はあると思うわ」
「ったく・・・いろんな意味で逞しいな、ルイーザは」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢ですか?……フフフ♪わたくし、そんなモノではございませんわ(笑)

ラララキヲ
ファンタジー
 学園の卒業パーティーで王太子は男爵令嬢と側近たちを引き連れて自分の婚約者を睨みつける。 「悪役令嬢 ルカリファス・ゴルデゥーサ。  私は貴様との婚約破棄をここに宣言する!」 「……フフフ」  王太子たちが愛するヒロインに対峙するのは悪役令嬢に決まっている!  しかし、相手は本当に『悪役』令嬢なんですか……?  ルカリファスは楽しそうに笑う。 ◇テンプレ婚約破棄モノ。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

処理中です...