上 下
36 / 136
第3章番外編 始まりの予感

2

しおりを挟む
「おい、起きろ、クルール」
机でぐったりしていたところにウルフが現れた。
昨日の書類整理が夜遅くまでかかったせいでまだ眠かった。
「ウルフか・・・今日は会う予定なんてあったか?」
「会う予定はないが、もう昼だぞ?いつまで寝てるんだ」
「おっとすまん。大分寝てしまったようだな。
 って、ウルフが何でここにいるんだ?約束あったっけ?」
「いや、約束があった訳ではないが大変だ。昨日、平原に現れたゴブリン集団が倒されたそうだ」
「は!?その問題、もう解決したのか」
「ああ、俺のとこのギルドで調査依頼を出したんだが、ちょうどボスらしきモンスターが倒されたと報告を受けた」
「倒されたんなら良かったじゃないか。わざわざ俺のところに来る必要は無いんじゃないか?」
「まあ、ただ倒されて軍団は絶滅したって報告だけなら来なかったけどよ、倒されたモンスターについて調べたら普通のモンスターじゃないことが分かったんだ」
ウルフが調査依頼を頼んだギルドの人達から受けた報告によると、ボス的な存在のハイゴブリンが火を吐いたそうだ。
「ハイゴブリンが火を吐くなんて事例は今までにないぞ?」
「ああ、奴にはドラゴンの血が混じっていたそうだ」
「それってつまり・・・」
「恐らく、何者かに改造されたハイゴブリンだろうな。強さも普通のハイゴブリンよりも強いらしい」
普通のハイゴブリンがレベル4くらいだとすると改造ハイゴブリンはレベル6くらいはあるそうだ。
ジョブを持つ者でレベル6は大きなギルドなら、チーム内のリーダーになれるくらいの経験がある人と同じだ。つまり、普通の人よりは経験もあり強さもある人だ。それくらいの人が一対一でやっと互角に戦えるレベルだ。
「そんなゴブリンを倒してしまうとはな、流石だな」
「いや、倒したのは下級職を持つ小さな探検隊の者らしいぞ」
「ほお、将来が楽しみな奴らだな」
「報告によると、大きな一角の獣に乗った2人組で大きな剣を扱う者と魔法力のある弓を扱う者だそうだ。」
「まさか・・・」
そのような人物はクルールが知る限りだとあの2人しか居ない。
ジュンとルイーザだ。一角の獣はルイーザの仲間のワッフルのことだろう。
まさかあの2人がそんな危険なモンスターに遭遇して倒してしまうとは。
「ジュンとルイーザか」
「そうだ。あの2人が戦ってしかも勝利した」
「だが、あの2人のレベルは・・・」
「そうだ。レベルは3。この前の戦いで4になったみたいだが、2人がかりであのハイゴブリンと戦っても勝つのは難しいだろう」
水江でならず者集団をやっつけた出来事もあったが、ここでまたあの2人にまた驚かされるとは思わなかった。
「あの2人は将来ビッグになるかもな」
「ああ、確かにな。楽しみな2人だよ」
2人のことを思い出して、話が脱線してしまったが、ウルフは本来の話題に戻す。
「あの2人の将来も気になるが、今気になるのは、あの改造ハイゴブリンを誰が作ったかというところだ」
「誰がやったか目星は立ってるのか?」
「分からん。推測でしかないが、ギガロに関係する者の仕業じゃないかと睨んでる」
「まあ、今、一番怪しい奴らと言えば、それしかないよな」
「あいつらの目的が何か分からないのも不気味なもんだな」
ギガロは一体何をしようとしているのか。この異界を作った目的も分からないし、さらにバックにいる組織の存在も謎のままだ。これらについては更に調査をしなければならないだろう。
「はあ・・・、書類仕事だけでも忙しいのに、次から次へと厄介な事が起きるな」
クルール達、ギルドの上級職の者たちに休みはしばらく来なそうだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたの思い違いではありませんの?

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?! 「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」 お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。 婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。  転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!  ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/19……完結 2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位 2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位 2024/08/12……連載開始

異世界日帰りごはん【料理で王国の胃袋を掴みます!】

ちっき
ファンタジー
異世界に行った所で政治改革やら出来るわけでもなくチートも俺TUEEEE!も無く暇な時に異世界ぷらぷら遊びに行く日常にちょっとだけ楽しみが増える程度のスパイスを振りかけて。そんな気分でおでかけしてるのに王国でドタパタと、スパイスってそれ何万スコヴィルですか!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

欲しいものはガチャで引け!~異世界召喚されましたが自由に生きます~

シリウス
ファンタジー
身体能力、頭脳はかなりのものであり、顔も中の上くらい。負け組とは言えなそうな生徒、藤田陸斗には一つのマイナス点があった。それは運であった。その不運さ故に彼は苦しい生活を強いられていた。そんなある日、彼はクラスごと異世界転移された。しかし、彼はステ振りで幸運に全てを振ったためその他のステータスはクラスで最弱となってしまった。 しかし、そのステ振りこそが彼が持っていたスキルを最大限生かすことになったのだった。(軽い復讐要素、内政チートあります。そういうのが嫌いなお方にはお勧めしません)初作品なので更新はかなり不定期になってしまうかもしれませんがよろしくお願いします。

Duo in Uno(デュオ・イン・ウノ)〜2人で1人の勇者の冒険〜

とろろ
ファンタジー
滅びゆく世界で、人々の感情を取り戻すために戦う者達がいた....。 主人公アストリアは、感情を象徴する「魂」を回収し世界を救う使命を背負う若き戦士。彼の体には、自分とは別人格の弟"セラフィス"が宿っている。強力なスキャニング能力を発揮して彼をサポートする特殊な存在だ。 人間味溢れるリーダーのアストリア、心優しく冷静沈着なセラフィス、いつも陽気でムードメーカーのローハン、情に厚く仲間想いな女盗賊のマチルダ....性格も能力も異なる仲間達は、時に対立しながらも、強敵や困難に立ち向かっていく。 これは、過去の傷に囚われながらも新たな絆を築き、心の闇を乗り越えていく仲間達の成長の物語です。冒険と戦いの中で「人間らしさ」を問い直していきます。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~

クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。 だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。 リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。 だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。 あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。 そして身体の所有権が俺に移る。 リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。 よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。 お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。 お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう! 味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。 絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ! そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!

処理中です...