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17.無意味/解く鎖
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それからしばらくの間は、部屋に閉じこもって過ごしていた。
照りつける夏の日差しがあまりにまぶしくて――と、いうのは言い訳。
本当は怖かった。
外の世界が怖かった。
また突然、呼吸が苦しくなって、自分が自分でなくなってしまうのではないか――。
玄関に立つと身がすくみ、様々な不安が脳裏をよぎって、うずくまってしまう。
そんなことを繰り返していたある日、
――『今日すごい!! 夕日がとってもキレイだよ!』
響からそんなメールが届いた。
急いで窓の外をのぞいたが、ガラスが汚れているせいで赤い空はくすんでいる。
俺はどうしても彼が目にしている純粋な空の色を知りたくて、勇気をふり絞り、ドアを開ける。
そこには、街が静かに焼けているような、澄んだ茜色が広がっていた。
何も考えず、ただぼんやりと空を見上げた。
呼吸は乱れなかった。
気づくと、恐怖心もどこかへ吹き飛んでいた。
響は他にもいろんなメールをよこした。
――『たっくん、最近どうしてるの?』
――『せっかく夏なのに、部屋の中なんてもったいないじゃん!』
――『ただでさえ肌白いんだから! 光合成しようよ! 真っ黒になってボクをびっくりさせてちょーだい』
――『期待してるからね☆』
一方的に期待されても困るのだが。
けれど部屋の中にいてもやることがないのは確かだった。
そこで、大学へ出向き、掲示板に貼り出された短期バイトに片っ端から手をつけていった。
市民コンサートの会場作り。
教授が出演するセミナーの看板持ち。
心理学実験の被験者。
その他、大学主催イベントの警備やゴミ拾い……等々。
どれも楽しいとは言えなかったが、少しは世間の役に立っただろう。
ただ、残念なことが一つ。
俺の肌は太陽に当たっても火傷のように赤く腫れるばかりで、まったく黒くならないのだ。
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