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5.艶ノ色/卑屈弟 ※
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◆ ◆ ◆
頭がふわふわする。完全に飲みすぎた。
あの後、響はすぐに帰ってしまった。
理由は言わなかったがおそらく、彼女の機嫌を損ね、呼び出しをくらったのだろう。
彼に罪は無いのに。
愛する人を信用できないことを棚に上げ、なんだかんだと浮気を疑い、監視し、理由づけ、束縛するような身勝手女など、とっとと捨ててしまえばいい。
──早く自由になって、俺のもとへ帰ってくればいい。
最低なことを考えながら、アパートへ戻った。誰もいない暗い部屋に光をともす。
溜息をつきながら軽くシャワーを浴び、汗と酒場のニオイを落とした。
バスタオルで髪を拭いていると、テーブルの上に目がいった。
空っぽのカップ。
響が買ってきてくれて、俺が半分食べて、そして彼がこっそりと残りを食べたアイス。その残骸。
ゴミ箱へ入れようとしていたはずなのに、気がつくと手のひらに乗せていた。
鼻を近づけると、抹茶の甘い香り。
舌先を這わせると、苦味があった。
「……はぁ」
こんなことだけでどうしようもなく、胸が高鳴ってしまう。
挙句、響が寝転んでいた辺りを思い出し、同じような姿勢で横になる。
それでも満足できず、ついにはカーペットに鼻を寄せてしまう。
「……ひ、びき……」
彼の残り香を求めているうちに、指は腹をたどり、下へとおりていった。
ついさっきまでそんな気分ではなかったはずなのに、込み上げる熱を抑えきれない。
「……っん……」
ゆっくりとした手つきで、自身を慰めていく。
通り過ぎる指の感触は新鮮味が無く、とっくに飽きているはずなのに、彼を想うだけで神経が高ぶっていく。
おまけに、ケティにされながら考えていたことがまだ頭の片隅に残っている。まとわりついて、離れない。
たった数時間前、彼のいた部屋でこんなことを──。
情けないはずなのに、声が漏れてしまう。痺れと興奮がだんだんと体を支配していく。きっと、酔っているせいだ。
硬く張りつめたそこはひくひくと震え、透明な液を垂れ流しながら、さらに強い刺激を求める。
──ふと、考えてしまった。
もしかすると俺はただ、彼と肌を重ねたいだけなのではないか、と。
ただ単に、友達でも親友でもなくなる危機感を味わいたいだけではないか。
初めてケティとしたときの絶頂が忘れられず、新たな罪を求めているだけではないか。
「……はっ……んはぁ……」
どうなのだろう。
今は、よく分からない。
頭がふわふわする。完全に飲みすぎた。
あの後、響はすぐに帰ってしまった。
理由は言わなかったがおそらく、彼女の機嫌を損ね、呼び出しをくらったのだろう。
彼に罪は無いのに。
愛する人を信用できないことを棚に上げ、なんだかんだと浮気を疑い、監視し、理由づけ、束縛するような身勝手女など、とっとと捨ててしまえばいい。
──早く自由になって、俺のもとへ帰ってくればいい。
最低なことを考えながら、アパートへ戻った。誰もいない暗い部屋に光をともす。
溜息をつきながら軽くシャワーを浴び、汗と酒場のニオイを落とした。
バスタオルで髪を拭いていると、テーブルの上に目がいった。
空っぽのカップ。
響が買ってきてくれて、俺が半分食べて、そして彼がこっそりと残りを食べたアイス。その残骸。
ゴミ箱へ入れようとしていたはずなのに、気がつくと手のひらに乗せていた。
鼻を近づけると、抹茶の甘い香り。
舌先を這わせると、苦味があった。
「……はぁ」
こんなことだけでどうしようもなく、胸が高鳴ってしまう。
挙句、響が寝転んでいた辺りを思い出し、同じような姿勢で横になる。
それでも満足できず、ついにはカーペットに鼻を寄せてしまう。
「……ひ、びき……」
彼の残り香を求めているうちに、指は腹をたどり、下へとおりていった。
ついさっきまでそんな気分ではなかったはずなのに、込み上げる熱を抑えきれない。
「……っん……」
ゆっくりとした手つきで、自身を慰めていく。
通り過ぎる指の感触は新鮮味が無く、とっくに飽きているはずなのに、彼を想うだけで神経が高ぶっていく。
おまけに、ケティにされながら考えていたことがまだ頭の片隅に残っている。まとわりついて、離れない。
たった数時間前、彼のいた部屋でこんなことを──。
情けないはずなのに、声が漏れてしまう。痺れと興奮がだんだんと体を支配していく。きっと、酔っているせいだ。
硬く張りつめたそこはひくひくと震え、透明な液を垂れ流しながら、さらに強い刺激を求める。
──ふと、考えてしまった。
もしかすると俺はただ、彼と肌を重ねたいだけなのではないか、と。
ただ単に、友達でも親友でもなくなる危機感を味わいたいだけではないか。
初めてケティとしたときの絶頂が忘れられず、新たな罪を求めているだけではないか。
「……はっ……んはぁ……」
どうなのだろう。
今は、よく分からない。
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