一條さんとにじっぴ! 〜そのマスコットは気象予報士を愛しすぎている〜

雨宮くもり

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イバラのみち、天使のはしご

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「やあ、伊原くん」

 守谷さんはにこやかに挨拶。イバラはそれを完全無視した。

 への字口のままツカツカと鷲尾のほうに歩み寄り、なんの躊躇もなくその腕に手を回す。
 新郎新婦の入場のよう。仲の良さを見せつけるかのようにぴったり寄り添う。


「おや、ずいぶんと意気投合したようだね」

「ワシオ行くぞっ」

「いやあのオレ、人探してて……いちじょお……」

「そんなの僕がいればどーでもいいじゃないかっ!行こっ!!」


 イバラはとんでもないパワーで鷲尾を無理やり連れて行こうとする。
 彼の細い指が釣り針のごとく肉に食い込んで痛い。いばらのトゲの比ではない。


「おい引っ張んなって! 守谷さんそれじゃあ失礼します」

「ああ。これからも期待してるよ、鷲尾クン」


 やれやれとあきれた様子で会議にもどる守谷さんの背中。鷲尾の腕を引いてグングン進むイバラの背中。

 二人の間を漂うただならぬ空気を鷲尾は察知してしまった。


「クソッ……あんなやつ……」

 先を行くイバラは相当いらだっている様子だ。
 鼻息は闘いを終えた牛や馬のごとく。全身は電気をためているかのようにピリピリ。
 ぶつぶつと吐き捨てる悪態はすべて守谷さんにむけられたものだ。

 詳細が気になるものの、「なにかあったんっすか?」なんて無神経に聞くわけにもいかない。
 


(まあ、知らねぇほうがいいこともあるか……)

 
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