一條さんとにじっぴ! 〜そのマスコットは気象予報士を愛しすぎている〜

雨宮くもり

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イバラのみち、天使のはしご

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「──お。鷲尾クンじゃないか!」


 そんなとき隣の会議室からひょっこり出てきた面長フェイスは、守谷プロデューサーだった。
 電話やメッセージでやり取りはしていたが、局内で顔をあわせるのは久しぶりだ。


「守谷さん! お疲れ様っす!」

 ぺこっと頭を下げてから浮上する鷲尾の視線は、彼の長い下まつげに吸い寄せられた。
 いつもならばちょっと大きめの黒縁メガネをかけているのに、今日は珍しく裸眼だった。


(守谷さん、渋っ……やっぱかっこいいよなー)

 アンニュイというかエスニックっぽい大人の色気についつい魅せられてしまう。


「なかなか面白くやれてるようだね。やっぱりキミにまかせて正解だった」

「え……、あっありがとうございます」


 にじっぴのことを言っているのだとすぐにピンときた。


「正直、最初の二日間はどうなることかと思ったんだが」

「すんません」

「謝ることじゃない。キミはよくやってくれているよ。さすがだ。まかせて正解だった」


 そもそも守谷版にじっぴがあまりにも棒立ちすぎたのだ。
 あれと比較するなら誰がやったって満点大正解に決まっている。

 それでも、褒められること自体は嬉しかった。

 にじっぴとしての活躍を鷲尾の手柄だと言ってくれるのは守谷さんだけ。
 きちんと褒めてくれるのは守谷さんだけ。
 当然のことでも、嬉しいものは嬉しい。


(こういう気持ちも浮気のうちに入るのか……? まあ、でも、そんなこと言ってたらキリねぇからセーフってことで)


 鷲尾はもう守谷さん推しではない。
 でも憧れていた頃の気持ちがよみがえれば、エサを前にした犬のように心が弾むのはとめられない。


(憧れと本気の恋は別! 別だからセーフ!)
 
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