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イバラのみち、天使のはしご
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しおりを挟む遅刻してごめんなさい!と土下座したい気持ちをこらえ、一條さんにのそのそと近づいていく。
なぜか遠い。
近づいているはずなのにちっとも近くならない。
吹き荒れる冷たい風がにじっぴのふわふわボディを押し返しているのだ。
まるで『最低の浮気者は一條さんに近づくな』と拒絶されているみたい。
歩いても歩いても戻される。
いくら足を前に出してもたどり着かない。
押し戻される度、心まで散り散りの離れ離れにされてしまうみたいで、嫌だ。
そのうち大根足が大きくもつれた。
すでにクタクタの鷲尾はついに力尽き、ズデンと頭から転ぶ。
お客さんたちが「ワッ」と声なき声を上げた。「大丈夫?」とか「がんばれ」とか「ないちゃだめだよ」と応援しているのが聞こえる。
(なっ、泣くもんか……泣いて叫んで駄々こねたいけど、泣くもんかっ、負けてたまるか!)
うつ伏せに倒れたまま起き上がれないにじっぴは、ズリズリとほふく前進を続けた。
そして週間予報が終わる直前、やっと一條さんの足元へたどりついた。
灯台のようなその脚にぎゅっとすがりつく。
なんの事情も知らない人からすれば、迷子の少年がベソをかきながらやっとお母さんを探し出した感動の一瞬に見えただろう。
しかし、
(一條さんっ……一條さんっ……違うんですぅ……あれは誤解ですぅ……)
鷲尾の心は、浮気がバレて恋人に愛想つかされているダメ男の気持ちだった。
ごめんなさい、もうしない、行かないで、大好き大好き行っちゃヤダという心の叫び。
果たして、肝心の一條さんにはどう見えているのだろう。
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