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イバラのみち、天使のはしご
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しおりを挟む今日の仮想デートのプランは、ここで美味しいスイーツを食べて、足湯に浸かって、渓谷沿いの美しい景色を散歩することになっている。
夕方までにすべて撮り終えられるか──少々不安だ。まあ、なんとかやってみるしかない。
「ここの名物といったら、やっぱ『おくるみ大福』っすよね」
小型カメラを持った鷲尾が話しかけると、お姉さんは乙女から仕事モードに切り替えて「そうです」と強くうなずいた。ポニーテールが彼女の意志に寄り添うようにさらりと揺れる。
「おくるみ……?」
イバラだけがピンときていない風に首をかしげていた。
「おじいちゃん──うちの初代が、赤ちゃんにおくるみを着せるようにやさしく丁寧に包んでる大福なんです」
「オレここの大福だいすきで。うまいっすよねー!」
「ありがとうございますっ。団子屋ですけど嬉しいです。ふふふっ」
絹のように真っ白でふっくらなおもちに包まれて、ほくほくで素朴な味わいのあんこがたっぷり詰まっている。
甘党の鷲尾はその味を思い出すだけでうっとりだ。ヨダレが出てくる。しかし、
「プギャアッ!!!!!!」
隣から聞こえたのは首を掴まれたニワトリのような悲鳴。
「……イバラさん?」
「だっ、だ、大福……だとッ」
ただでさえ白い顔をさらに白くさせ──大福よりも白い──、青い瞳をひんむき、しんどそうに冷や汗をかいている。
ただ事じゃなさそうだ。
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