一條さんとにじっぴ！ 〜そのマスコットは気象予報士を愛しすぎている〜

イバラのみち、天使のはしご

14

　
「にじっぴは守谷さんが言い出したんっすよ。子どもにも予報を見る習慣をつけてほしいとかで……」

「フン」


　イバラの乳白色の肌にまるでヒビ割れのようなシワが走る。
　陶磁器製のエンジェルのようにも見える顔立ちが、なんとも醜い。


「あのエロプロデューサーの考えそうなことだ。女子供にすぐ媚びやがって」

「媚びてもいいんじゃないっすか。子どもが天気予報に関心を持てば、台風とか大雨から身を守ることにつながりますよ」


　一條さんの直接言葉にしない気遣いをよく理解しているからこそ、鷲尾はすらすらと反論する。
　イバラはぐうのねも出ないらしい。座席に深く沈み込み、文字通り「ぐぅ」と言いよどんだ。


（やったっ！　オレ勝ちましたよッ、一條さん！）


　鷲尾はスンとすました表情のまま、心の中では高々と拳を突き上げる。