一條さんとにじっぴ！ 〜そのマスコットは気象予報士を愛しすぎている〜

イバラのみち、天使のはしご

9

　

　イバラ様と県内の観光スポットを散歩し、魅力や名物を紹介するミニ番組を撮影しなければならないのだ。

　これを企画したディレクターは、一回目の放送を待たずに白旗をあげた。
　イバラ様と丸一日ロケしただけでメンタルをむしばまれ、ボロ雑巾になってしまったらしい。

　後任として鷲尾に白羽の矢が立った。

　守谷さんに「キミならできる。やればできる！」となんの根拠もなくＧＯサインを出されてしまった。



（守谷さん、めんどくせぇ仕事はとりあえずオレに押し付けてんじゃ……？）


　せめてイバラと二人っきりのロケは回避しようと技術スタッフに声をかけたが、全員拒否。


　イバラ様とふたりっきりの地獄。

　カメラを持つ鷲尾は、強制的にカノジョ役になるのだ。


　好きでもない上に、玉を握り潰してくるかもしれない男とデート。

　カメラごしにずっと見つめ合い続けるような撮影──。


（拷問だろ！こんなのッ！！！）