一條さんとにじっぴ！ 〜そのマスコットは気象予報士を愛しすぎている〜

それでもゴールは相合傘の下

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　大量の汗がしみこんだ脇の下がいまだ冷たい。


（ひとまずは、オレがにじっぴだってバレずに済んだな……よしよし……）


　春先とはいえ夜風は冷えた。早く着替えなければと思いながら、そーっと玄関を開ける。

　時刻は深夜1時。
　物音を立てないようにつま先立ちで風呂場へ直行。


　葵が探してくれた鷲尾の新居は、局から徒歩15分という夢のような立地のアパートだった。
　再開発地帯とひなびた商店街の狭間のようなエリア。

　とはいえ近くにスーパーやコンビニもあるし、少し遠回りに歩けば大きめの公園もある。


　しかし、建物のボロさ具合は前に住んでいたところよりも酷い。

　お風呂のタイルは何度貼り直してもうまくハマらない。トイレの床はトランポリンみたいにぼよんぼよん弾む。

　窓は網戸が閉まりきらずに途中でガツガツ引っかかる。やっと閉まったと思っても、閉まりきっていない。スマホを挟めそうなぐらいの隙間がばっちり空いている。
　夏はここから蚊が押し寄せて、鷲尾の体がドリンクバー状態になることだろう。

　長い年月と雨風で建物全体がゆがんでいる証拠だ。


　しかし、大家さんが丁寧に掃除をしていた物件らしく、部屋そのものはさっぱりとした気持ちの良い空気に満たされている。

　だから物件そのものに対しての文句はない。

　問題は隣人だった。