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それでもゴールは相合傘の下
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しおりを挟む「まあね、でもね、手の届かぬ恋だからこそ追いかける理由があるっていうか、燃えるんだよねえ」
いやに遠い目をして頬杖をつき、葵は再びパスタをくるくると巻き出す。
「……あーあ。どうして好きになっちゃうかねぇ……」
「は? なんの──」
そのとき、鷲尾の背後でけたたましい音がした。
新人ウェイトレスが運んでいた料理を派手にひっくり返してしまったらしい。
まるでパレード直後の紙吹雪のごとく、通路にフライドポテトやナゲットが散らばっている。
使いっぱしりの職業病なのか、考えるよりも先に体が動いていた。しゃがみこんでポテトを拾い集めていく。
揚げたてホヤホヤ。たまらなく熱い。火のついたマッチ棒同然。
アチチと指先をフーフーする鷲尾に、這いつくばったウエイトレスは「ありがとうございます!」とぺこぺこ頭を下げた。
「──ふぃー、指が燃えたぜ」
鷲尾が席に戻ったのは数分後。
葵は「お疲れ様」と氷がたっぷり入ったグラスを差し出す。フットワークの軽い兄をすかさずサポートする、あうんの呼吸である。
「すまん。で、なんの話だったか?」
「なんでもにゃーいれーす!」
空っぽのお皿の前で、ごちそうさま、と手をあわせ葵はニッコリ微笑んだ。
「雑草が入ってたってなんだって、美味しいものは美味しいってこと!」
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