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それでもゴールは相合傘の下
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しおりを挟むしかし、鷲尾は目の前にいるのがドッペルゲンガーではないことを一目で見抜いた。
目印は、すらりと長く伸びた脚がつくりだす高身長。
気づけばすぐに半開きになっている締りのない口元。
無防備なへらへらふわふわオーラ。
にじっぴの前にあらわれたのは鷲尾の双子の弟──葵だった。
(なんでいるんだよぉおおお!!コイツひまか!棚ぼたでバズったくせにヒマなのかああああ!!!)
「鷲尾のヤロー、堂々とサボって美人と絡んでやがる」
「今週は守谷さんがいないから羽伸ばしてんですよ」
「ったく、おだづなよ!」
叫ぶに叫べないでいるにじっぴの背後、放送の準備をしているスタッフ達のコソコソ話がした。
ちなみに『おだづなよ』とは『調子に乗るなよ』という意味。
鷲尾と毎日顔をあわせているスタッフ達でさえ、葵を鷲尾だと思い込んで疑わない。
鷲尾兄弟はそれほどそっくりなのだ。
比較対象がないと背が高いか低いか見分けることは難しい。
そして、素顔の鷲尾がふらふらしていることに誰よりもおどろいているのは一條さんだった。
細目を1.5倍に開いて視線を送り、鷲尾(葵)に話しかけたそうにもじもじしている。
だが、もれなくオバチャンのおしゃべりに捕まって半笑いでぺこぺこしている。
一條さんはやはり、にじっぴの中に鷲尾が入っていると気づいているようだ。
それなのに鷲尾と同じ顔の男がにじっぴ写真撮影会のカメラマンをしている。
混乱しないわけがない。
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