一條さんとにじっぴ! 〜そのマスコットは気象予報士を愛しすぎている〜

雨宮くもり

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それでもゴールは相合傘の下

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「にぴ! にーぴっ! にぴぃー!」


 一方、にじっぴの周りにはちびっこ5人組。
わーわーきゃーきゃーぴょんぴょん。水揚げされたばかりの小魚のような騒ぎっぷり。ひとりにつき大人10人分ぐらいのパワーで容赦なくぶつかってくる。
 『にじっぴ』とは言いにくいらしく、みんな『にぴ』と呼んでくるのがなんともラブリーだ。

 そんな稚魚たちをかき分けるようにテケテケと走ってきた女の子が、にじっぴの前でぺこんとおじぎをした。


「にぴ!だいすき!ふぁんです!おしですっ!!」


 黄色いカバンを肩にかけた幼稚園帰りらしきその子は、鼻の穴をふくらませてフンフン鳴らしながら堂々と推し宣言をする。

 よっぽどリスペクトしているのか、おだんごヘアーに赤いポンポンの飾りをつけていた。


「ぷれぜんとです!」


 賞状のように両手で渡してきたのは、画用紙いっぱいに描かれたにじっぴの絵だった。

 でっかいオレンジのまんまるに赤い耳のようなもの、てんてんの目。
 プレゼントしてくるだけあって、とてもよく描けている。

 本人的にもこれが超力作だという自信があるのか、ほっぺを真っ赤にさせながらにじっぴを見上げている。

 感謝をこめておだんご頭をやさしくポンポンすると、「きゃあ!」と顔を両手で隠し、体をぶんぶん左右に振り出した。恋する乙女そのもの。


 描き込まれているのはにじっぴだけじゃなく、虹色のお姫様も一緒だ。
 きっとこの子自身だろうとすぐに分かったが、よくよく見るとにじっぴの下にケムシのような黒い物体がぐちゃっと描かれている。

 首をかしげつつ『このケムシは何?』とジェスチャーでたずねてみれば、


「いちじょーさんだよっ!」


「──!」


 鷲尾は思わず声を出して笑いそうになった。

 頬の肉をかんで喉を締めるようにぐっとこらえたが、全身がゼリーになったみたいにぶるんぶるん震えてしまう。

 とんでもない画伯とめぐりあってしまった。
 
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