一條さんとにじっぴ！ 〜そのマスコットは気象予報士を愛しすぎている〜

あめ降って地固まる

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　もちろん、鷲尾が今日からにじっぴになることは話していない。


（なんでだ！？　なんで葵が……？）


　守谷さんに家族にも言うなと釘を刺されたし、葵はふわふわと口の軽いシフォンケーキ人間（無自覚）なのでそもそも言えるわけがない。

　だが、葵の超個人的な着ぐるみ愛が春のポカポカ陽気で芽吹いて、生にじっぴを拝みに来ていてもおかしくはない。
　今日から局の前からの生中継であることは事前に告知されていたはず──。

　ついでに兄の想い人を遠くからでも見てやろうという野次馬心もあったのかもしれない。


「にじっぴの中って誰？」

「これ始末書じゃ済まないだろ」

「明日の放送できるか……？」


　眉をひそめているスタッフ達を尻目に、鷲尾は『オレがにじっぴ！　でもって撮影者は弟です！』という叫びを舌の裏にねじこみ、硬直した。
　だが黙っているのはあやしいかと気づき、「SNSの影響力ってすげぇっすもんねー」と当たり障りのない反応でアハアハと笑ってみた。


「ふふふふっ……」

　足元から覇気のないつられ笑い声が聞こえた。