一條さんとにじっぴ! 〜そのマスコットは気象予報士を愛しすぎている〜

雨宮くもり

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あめ降って地固まる

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「ん……? あれっ? にじっぴ?」

 そのとき、なにも知らない一條さんは戸惑った。

 にじっぴの声なき声を聞くだけだったはず──なのに、にじっぴのほうから勝手に動き出したのだ。
 一條さんになにかうったえるように、グッと背中に手が回る。


 どこか具合でも悪いのではないか──、心やさしい一條さんはすぐにそう考えた。
 まだ春先とはいえ日射しは強い。条件によっては熱中症に近い症状が出てもおかしくはないだろう。

 だが──。


「に、にじっぴ……?」


 にじっぴはやわらかな自らの内側へと一條さんを誘うように、ムギュッと抱きしめてきたのだ。
 押し潰してしまいそうな力強さで──。


「ど……どうしたのかな? まだ本番中だよ。遊ぶならあとで……っわあああ!!」
 

 あまりにも力を込めて抱きしめられ、細身の一條さんはにじっぴの中に充満する空気の圧にたえられなかった。
 ぼわんと弾かれるように体のバランスを崩し、尻もちをつく。

 すぐに立ち上がろうとしたものの、目の前に迫っていたのは大きな大きな太陽のようなぽかんとしたマヌケ面。

「──!?」

 混乱しすぎて声が出なかった。

 その太陽はゆっくりと、だが、明確な意思と狙いで一條さんのほうへと倒れ込んでくる。


「にじっ……ぴぃいいい!?!?!?」


 ショーマストゴーオン。どんなことになっても放送は続いている。
 カメラがとらえた映像がリアルタイムで電波になって発射され続けている。

 だが、もう放送のことなんて考えている余裕はなかった。

 
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