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あめ降って地固まる
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あくまでもメインは一條さんの天気予報だ。
にじっぴは添え物。彩り。可愛さ。エビフライのしっぽ。コーンスープのクルトン。ホットケーキの上をすべるバター。
「──この先も日曜日にかけて穏やかに晴れるでしょう」
今日の一條さんはとてもリラックスした様子で、一度も噛むことなく予報を終えた。
「さて、新年度からも一條とにじっぴがゆるく仲良くお届けします! よろしくお願いします!」
あとは肝心のフリートークゾーンを残すのみ。
「──トッ、ところでッ! にじっぴ!!」
なめらかなスタートで走り出すかと思いきや、やっぱりトビウオのジャンプのような力がこもる。
ナチュラルな調子で話そうと意識しすぎているのかもしれない。
鷲尾は『なんだい?』という具合ににじっぴボディをかたむけ、緊張をほぐすように彼の背中をやさしくぽんぽんした。
「にじっぴ……!」
いままではノーリアクションの着ぐるみに一方的に話しかけるばかりだった一條さんは、そのとき初めて顔を上げ、にじっぴの目を見た。
アイコンタクト。
ボケとツッコミが噛み合った瞬間のような、ワクワクとした輝き。
「今日の県内はポカポカしてて、眠たくなるようだったね。もうすぐにじっぴと同じ色のきれいなお花たちがたくさん咲きそうで本当に楽しみだね! 菜の花に水仙にレンギョウにタンポポ!」
一條さんはそれまでのギクシャクとした力みが一気にほぐれ、自らもにじっぴの背中をぽんぽんと叩き返した。
にじっぴは『ほんと楽しみっすねー!』と今日の青空めがけて手をのばす。
一條さんとにじっぴの姿をこの半年間ずっと撮影しているカメラマンの喜多村さんが『いい調子だ』と言わんばかりに、鼻息をムフムフと荒くさせた。
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