一條さんとにじっぴ！ 〜そのマスコットは気象予報士を愛しすぎている〜

あめ降って地固まる

5

　
　鷲尾は『当たり前じゃないっすか！』と叫びたい衝動をグッと飲み込み、あくまでにじっぴとして動く。

　一條さんの肩にふかふかの手を置き、『オッケー！』と頭全体をバウンドさせるように大きくうなずいてみた。

　鷲尾本体にとっては、ほんの一回うなずくだけでも頭がくらくらするほどの重労働だった。
　普段の５倍ぐらい大げさに動かなければ、にじっぴの元気の良い動きにはならない。

　守谷Ｐが交代してくれと頼んできたのも無理はない。
　半年前の飲み会で「最近とっても四十肩が辛いのニャン」と泣き、鷲尾の背中を舐めるようにべたべた触っていた守谷さん。

　さぞかし苦労したのだろう。


　そうこうしているうちに鷲尾も次第に頭がぼーっとしてきた。脇の下や腹周りにじっとりと汗がにじんでくる。

　本番まで体力が続くかどうか心配になるレベルでキツイ。

　けれど、


「よかった！　今日の本番はうまくできそうな気がする！」


　一條さんのやわらかな笑顔を一目見た瞬間、つまらない疲労は泡になってしゅわっと溶けていった。


　──疲れたとか考えている場合じゃない！

　──オレの一條さんへの愛はこんなもんじゃない！！

　──潰れてたまるか！！！


　鷲尾は静かに奮い立つ。