一條さんとにじっぴ！ 〜そのマスコットは気象予報士を愛しすぎている〜

あめ降って地固まる

3

　

　鷲尾はにじっぴとして『よろしく』と体を左右に揺らしてみた。思いの外、反動がついてよろけてしまいそうなのをかろうじて踏ん張る。

　鷲尾として『オレっすよ！』と叫んでしまえたら、どんなに楽だろうか──。


　でも、言えないのだ。

　守谷さんに『きみがにじっぴの中の人であることはヒミツだ』『絶対に誰にも言うな。家族にもだ』『きみは夢を守るのが仕事』『バレたら即クビ』と、ぶっとい釘をブチブチと刺されまくった。


　空気でふくらんだ体にいくつもの釘。
　ウーパールーパーじゃなくハリセンボンのよう。


「に、にじっぴ、なんだか雰囲気変わったかな？　いいお天気だからそう見えるだけ？」


　なにも知らない一條さんはぎこちなくニコニコ。
　鷲尾はナンパされているようでドキドキ。
　にじっぴ的には痛いところを指摘されてギクリ。


　おそらく、長身カマキリ体型の守谷さんからどっしり狛犬タイプの鷲尾に変わったおかげで見た目の印象が変わったのだ。
　足が短くなり、背丈も縮んで、幼児体型っぽくなった。