5 / 158
一條さんとにじっぴ(と鷲尾)
5
しおりを挟む
◆ ◆ ◆
「鷲尾くーん、お待たせしました……。はああ」
生放送終了時と同じ青白い顔の一條さんが、よろめきながら“谷”へ到着した。
廊下と物置の狭間にある、まるで谷のような小さな空間。もともとは喫煙所として使われていた南向きの凸。
野郎が二人ならべばもう満員になる極上の狭さ。
なにより嬉しいのは、壁に深くよりかかれば廊下から死角になる。休憩兼サボり場所としてすばらしく最適だ。
「今日は反省するところがありすぎて、どこからどうしたらいいのか……あ、ははは……」
「とりあえず、おつかれっす! 無事に終わったからいいんですよ」
「無事か……ものすごく噛みまくってCM……ハハハ、あんなの無事って言っていいのだろうか……。マイナス120点ぐらいの出来だよハハハ」
「一條さんったら採点厳しっ! マイナス5点の間違いでしょー!」
「いずれにせよマイナス……やっぱりそうだよね……最低最悪で救いようがなかったよね……ハハハ……」
「いや、あの、いや……冗談っす。そんなに真に受けないでください」
生放送後の反省会のあと、一條さんと鷲尾はささやかに励まし合うのが日課になっていた。
緊急ニュースが入らない限り、平日は毎日である。
失敗続きの気象予報士と駆け出しのディレクターは局内で肩身が狭い。二十代半ばで年が近いこともあり、生傷を舐め合うように意気投合していた。
「鷲尾くーん、お待たせしました……。はああ」
生放送終了時と同じ青白い顔の一條さんが、よろめきながら“谷”へ到着した。
廊下と物置の狭間にある、まるで谷のような小さな空間。もともとは喫煙所として使われていた南向きの凸。
野郎が二人ならべばもう満員になる極上の狭さ。
なにより嬉しいのは、壁に深くよりかかれば廊下から死角になる。休憩兼サボり場所としてすばらしく最適だ。
「今日は反省するところがありすぎて、どこからどうしたらいいのか……あ、ははは……」
「とりあえず、おつかれっす! 無事に終わったからいいんですよ」
「無事か……ものすごく噛みまくってCM……ハハハ、あんなの無事って言っていいのだろうか……。マイナス120点ぐらいの出来だよハハハ」
「一條さんったら採点厳しっ! マイナス5点の間違いでしょー!」
「いずれにせよマイナス……やっぱりそうだよね……最低最悪で救いようがなかったよね……ハハハ……」
「いや、あの、いや……冗談っす。そんなに真に受けないでください」
生放送後の反省会のあと、一條さんと鷲尾はささやかに励まし合うのが日課になっていた。
緊急ニュースが入らない限り、平日は毎日である。
失敗続きの気象予報士と駆け出しのディレクターは局内で肩身が狭い。二十代半ばで年が近いこともあり、生傷を舐め合うように意気投合していた。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件
水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて──
※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。
※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。
※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
「短冊に秘めた願い事」
悠里
BL
何年も片思いしてきた幼馴染が、昨日可愛い女の子に告白されて、七夕の今日、多分、初デート中。
落ち込みながら空を見上げて、彦星と織姫をちょっと想像。
……いいなあ、一年に一日でも、好きな人と、恋人になれるなら。
残りの日はずっと、その一日を楽しみに生きるのに。
なんて思っていたら、片思いの相手が突然訪ねてきた。
あれ? デート中じゃないの?
高校生同士の可愛い七夕🎋話です(*'ω'*)♡
本編は4ページで完結。
その後、おまけの番外編があります♡
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる