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一條さんとにじっぴ(と鷲尾)
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しおりを挟むきっと私生活では冗談なんて言わずにコツコツと真面目一筋な一條さん、頑張れ。
気象予報士としてのスキルは高いけど、着ぐるみに話しかける演技力はゼロ以下の一條さん、とにかく頑張れ。
(一條さんっ……好きぃいいっ!)
鷲尾は衝動のあまり、自分の体がみるみるうちに硬くなって大きな大きなサナギになったような心地になった。
オムレツみたいにぽふぽふに膨れたまま、恋の桜にしがみつく巨大サナギ。
はしたなく弾けて飛び立ってしまいたい。
でも、飛べない。
飛んだらきっとサナギ以上にでっかいナマモノをぼろんして、数百年後まで語り継がれる伝説の放送事故を巻き起こしてしまうに違いない。
「さて、このあとは沿岸の地域を中心に風が強まるところがあります。気温が下がりますので、今夜はあたたかくしておやすみください」
我を忘れかけたまま欲望をこらえている鷲尾に対し、目には見えない視聴者の健康まで気遣う優しさが一條さんにはある。
「では、現在発表されている注意報からお伝えします──」
だから鷲尾はますます彼に惹かれていく。
目が離せない。
離す理由が見つからない。
一條さん。
気象予報士の一條さん。
賢さと人のよさがにじみでる笑顔、地味めながら整った顔立ち、着ぐるみに圧倒されないすらりとした高身長、育ちの良さそうな気品や仕草、木漏れ日に誘うような甘い声。すべてがパーフェクト。
「……、トッ!!! トころで」
なのに、にじっぴに話しかけた瞬間、完璧さは崩壊する。
まるで毎秒ごとに感電しているみたいに一條さんの肩はビクビクと震え、舌がもつれ、言葉のはしばしに妙な力がこもる。
「にじっぴはァ、ケイチツってなんて読むか、あッ!」
黒マジックで『啓蟄』とだけ書いたなんとも地味なスケッチブックをにじっぴに見せ、クイズを出そうとした瞬間、うっかり答えを言ってしまった。
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