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・目の前のお兄ちゃんにもっと集中しなさい!(R18/ぷちケンカ)
昨日はごめんね
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玄関に優兄の白いスニーカーがあった。
ちょっとドキドキしつつも、口の中で『昨日はごめんね優兄』と何度も繰り返した。
優兄がオレに気づいたら真っ先に謝れるように念入りにリハーサルしながら、わざと足音を大きめにしてリビングへむかう。
ふーっと一呼吸置いてからドアを開け、いつも優兄が座っているソファーのほうを見た。
誰もいない。
えっ、と思った瞬間──、
「ごめんねッせんちゃんッ!!!」
すぐ足もとから声がした。オレの足の親指にくっつきそうなほど深く深く頭を下げた優兄がいた。
床におでこをこすりつけ、小さく丸まっている。完全に土下座状態。
「きらいだなんて言ってごめんなさい! 叩いてごめんなさい! もうしない! 絶対にあんなことしないっ……お詫びになんでもするから! だから許してッ!!」
「優兄」
早く顔を上げてほしくて丸い背中をさすったが、優兄は首を左右に揺らしてさらに深く沈み込むように頭を下げた。
ズルッとすするような鼻の音と、喉を引つらせているような呼吸が聞こえる。
「優兄、オレ怒ってないよ。だから、泣かないで」
「泣いてない」
「ウソだ。隠してもオレ分かるよ。絶対泣いてる」
「だから泣いてないってば──ッ!?」
怒ったように顔を上げた瞬間、オレは冷たい場所から救い出すように優兄を抱きしめた。
もう離さないという想いを込めて、ぎゅっ。
「ほんとだ。泣いてなかったね。ごめん、優兄」
ふかふかの黒髪に頬ずりしながら、オレも目を閉じる。
「せんちゃん……ッ、……」
ふぇ、という可愛い声が弾けた。
オレの背中をくしゃくしゃに握った優兄は「ごめんね」とつぶやいて、子どもみたいにワァンと泣き出した。
「優兄……っ……」
耳元でそれを受け止めているうちに、オレもボロボロ泣いていた。
どれだけ不安な気持ちで帰りを待っていたのだろう──想像したら、心がズキズキ痛くてたまらなかった。
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