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・目の前のお兄ちゃんにもっと集中しなさい!(R18/ぷちケンカ)
本気で
しおりを挟む「優兄ごめん……どこか痛かった?」
「違うの。そうじゃなくて……、せんちゃん、最近、ずっと……なんだか……」
優兄の声はどんどん小さくなって、涙の海に流れてしまう。ぼそぼそと聞き取りづらい。
オレのもとまで肝心なところが届かないのだ。
「え?」
「ちゃんとぼくのこと見てよッ!」
涙でぐしょぐしょに濡れた優兄の手がオレのはだかの胸をぱちん、と打つ。
その音があまりにも派手に響いたせいか、優兄はやっと我に返ったようにハッと息を飲んだ。
「──ごめんッ! ごめんね、せんちゃん! ぼく今つい、カッとなって……! 叩くつもりなんてなかったのに……ごめん、ごめんっ……」
「優兄」
青ざめたようにオレの胸にすがりついてきた優兄は「ごめん」と何度も何度も口にしながら、叩いてしまった場所を撫でようとしている。
もちろん、傷ができたわけではないから優兄の指はなんともない箇所をするすると這うばかり。
「気にしなくていいって。そんな痛くなかったから」
本当はじんじんと脈打つぐらいに痺れていた。
みるみるうちに肌が赤に染まっていく。
優兄の手のひらの形がハッキリと胸元に浮かび上がった。
本気でぶったらしい。
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