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・阿須崎くんと優太くん(友情)
あの頃の熱
しおりを挟む「ギリッギリまで網に近づけて本当に触りそうになったら引っ込めて、って」
「なんでそんなこと……?」
「二人ともとっても楽しそうなんだもん。ぼくもまざりたくって」
「まざってるよ」
「うん。分かってる。ごめんね。……でも、ほら……ね……」
優兄がなにを言おうとしているのか。
それは閉じ合ったまま細かく震えているまつ毛が物語っていた。
そういえばずいぶんと前に──優兄が目の手術のために入院しなければならないと決まった頃だ──今日のように阿須崎と三人で焼き肉をしたっけ。
あのときはお店ではなく家で、ホットプレートを使った安上がりで簡単なものだった。
──「ぼくが全部焼くからいっぱい食べてね、二人ともっ!」
あのときは優兄が焼肉奉行としてトングをカチカチさせながら、お肉の焼き具合を見守っていた。
阿須崎はプレートに手を近づけて「そんなに熱くないやろー……、熱っ!」というベタなリアクション芸をしつこいぐらい何度も何度もやってた。
優兄はそれを見て、危ないよって言いながらも涙を流してゲラゲラ笑ってた。
なにもかも忘れたように──いや、実際にあの瞬間だけは忘れていたんだろう。
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