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・ひとりぼっちの土曜日(微R15/ヤキモチ)
内緒だ
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家に帰ると、優兄は起きていた。
ホワイトフルーツロールケーキを買ってきたことを話すと、心におひさまがあらわれたみたいに表情が明るくなった。寝込んでたとき、ちょうど食べたいと思っていたらしい。
「ありがとう! せんちゃん大好きっ」
今朝の弱々しさはもう感じない。大丈夫そうだ。
どうしようか迷ったものの、ぬいぐるみも渡すことにした。
さっきまでオレの下心を隠すのに使っていたのは内緒だ。それから、阿須崎からのプレゼントであることも──。
「うわあああ! ありがとう! 大事にするねっ!」
マシュマロみたいなふわふわをほっぺにくっつけ、ぎゅーっとしている優兄は、嬉しすぎるのかその場でくるりと一回転した。
すっかり元気になった証だ。
ほっとしつつも、無意識のうちにパーカーのポケットの上をなでていた。こっちのことまでは絶対に話せない。
「むにむにのもちもちのふかふかでたまんない! あーん、放したくないよ! どーしよう」
そのことば通り、優兄はすっかりぬいぐるみに夢中になってしまった。
ロールケーキを二人で半分ずつ食べてるときも、そのあとにソファーでオレの太ももをまくらにしながらゴロゴロしてる間も、いつまでもいつまでもその腕のなかには、かがみもち。むにむにのモフモフ。
「──優兄っ!」
「ん? ……あれ?」
気づいたら、そいつをぶん取っていた。
急に愛しのモチモチちゃんが消えて、優兄は指を動かしつづけている。恋しそうに。
さすがに腹が立つ。
優兄にイライラするなんて有り得ないはずなのに、爆発を抑えきれない。
「さっきからこいつばっかズルい! オレは!? オレまだハグしてもらってないんですけど!」
ぬいぐるみをソファーの外にぽーんと追い出し、オレが優兄のもっちりほっぺを独占。手のひらでサンドイッチする。
「せんちゃんったらぬいぐるみにヤキモチ?」
「……っ」
厳密にいうとそうじゃない。
アホ崎を抱きしめているみたいでムカムカするんだ。オレが見てるのにずっといちゃいちゃしてるみたいで──。
でもこんなこと、絶対に口には出せない。
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