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・ひとりぼっちの土曜日(微R15/ヤキモチ)
阿須崎
しおりを挟む「──よっ! デカセン!」
「わっ」
背後から急に尻をたたかれ、手元が狂った。
狙いを定めていたはずのクレーンの先はぬいぐるみの顔面に軽くめりこんだだけで終了。空ぶりにもほどがある。
「わははは、へたくそーっ!」
「アンタが変なあいさつするからだろ」
オレの尻を断りもなくタッチしたのは、阿須崎だった。
優兄の学生時代からの友達。
オレもちっちゃい頃から何度も遊んでいるから顔なじみ。いつも眠たそうなぼんやりした顔をうんざりするほど見てきた。
それはむこうも同じらしく、
「お前、相変わらずでっけーなぁ! めちゃくちゃ目立つ! 10キロ先からでもデカセンだって分かる! また背ぇ伸びた? 髪切った? よっ、歩く巨人!」
優兄がいないときでもこうやってなれなれしく話しかけてくる。
だが、オレはこいつが好きじゃない。10キロ先は店の外だし、背は少し伸びたけど髪は切ってないし、巨人が歩くのは当たり前だ。イライラする。
子どもの頃もこんな調子でチビだチビだと笑われ『チビの千理で“チビセン”』とからかってきた。
成長した今は『デカい千理だから“デカセン”』と呼んでくる。
そんなセンスの無さが嫌いだ。マジうざい。
オレはこいつを『アホ崎』と呼んで仕返ししている。心のなかで。
たまに口にも出してしまうけど、そのたびに優兄に叱られる。本当のことなのに。
だいたい、優兄がオレの次にこいつを信頼している事実が気に入らない。
断固として認めたくない。
「デカセンぬいぐるみとか好きだったっけ? ……あ、そっか! ゆったんのためか?」
オレの優兄を“ゆったん”なんて呼んでほしくない。
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