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20 大好きだよ宮田くん黒宮くん
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しおりを挟む「──すぐ調子に乗る! ゴミッ!」
「ぐべっ」
彼を押し倒しかけていたボクのお腹に、グーパンチがお見舞いされる。
さっきまではとろりと優しかった徹斗きゅんの微笑みが、冷たい睨みの目つきに変貌していた。──黒宮くんが出てきてしまったようだ。
「わたしは許したわけではないからなッ! あのクソ親父を大きく改心させるせっかくの機会を奪ったお前を許しはしないからなっ!!!」
「んもー……まだ言ってる……」
黒宮くん的には、本気で死ぬつもりはなかったものの周りの人達を絶望のフチに叩きおとすぐらいの覚悟だったらしい。
その計画をボクのへなちょこグーパンで阻止されたのがよっぽど悔しかったそうだ。
──っていうかむしろ、そこがメインで悔しいみたい。
「ボクは黒宮きゅんのことも大好きなんだもん。血がブシャアするところなんて絶対に見たくなかったもん」
「わたしだってお前のことを愛している! 大好きなのならば何故、お前はわたしの自由の邪魔をするのだ!」
「前から思ってたけど……、黒宮きゅんって、お義父さんにソックリだよね」
「は!?」
「ワガママで自分勝手。でも愛情はちゃんとあるんだよね? ……似たもの同士できっといつかはできると思うよ、仲直り」
「なっななななな何を言うのだゴミアイス! わわわわたしがあの男と似ているわけがないないないだろがぁああああ!!」
──完全にその気になって照れちゃってる。本当は嬉しいくせに、素直じゃないんだから。
ワタワタしている黒宮くんをニコニコ眺めていると、穏やかなノックが聞こえた。
「失礼いたします」と大きなカートを押して入ってきたのは、岩泉さんだった。
「坊っちゃん、会津さま、おやつをご用意いたしましたよ」
「わあああ!! すごい!!」
広々としたテーブルにほわりとした甘い香りが次々にならべられていく。
焼き立てのクッキーやマフィン、ホットケーキ、アップルパイ……。一口食べたら心のなかまであたたかいお料理たちが勢ぞろいしている。
「先日のご無礼のお詫びでございます。どうぞ、お好きなものからお召し上がりくださいませ」
「これってもしかして岩泉さんの手作りですか!? めちゃくちゃすごいですねぇえええ!」
──なんて、ついついうっとりしちゃったボクにずぶりと鋭い視線。
ドアの隙間からじっとりと睨みつけてくるムキムキの影は、めでたく執事として復帰した尾花沢先生である。
「……実は調理の途中、多少の邪魔が入りましてブロッコリーやササミやプロテインが混入しているかもしれません。味に問題は無いとは思いますが、ご了承くださいませ」
岩泉さんは微笑みながらも、どこか呆れ顔。
異物混入の犯人はそれに気づくことなく、「あぁ岩泉様!」と胸の前で指を組み、目をキラキラさせている。
アイドルを見守る乙女そのもので、すっごく楽しそう。保健室でくすぶってた頃に比べるとだいぶイキイキして見える。
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