白い宮田きゅんも黒い宮田きゅんもどっちも大好きすぎてボクはもうヘンタイです!

雨宮くもり

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19 もっとピンチです!!

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「坊っちゃんの人格形成に歪みが生じたのは、思い通りになるときしか我が子を愛さなかった旦那様のせいでもあります。ですが、この会津さまは徹斗坊っちゃんのすべてを受け入れ、無条件に愛してらっしゃる。あなた様とこの青年どちらのほうが『ムダ』なのか、お考えください」

「……あ、あれ? ボク褒められてる!? ありがとうございます!」

「もちろんです、会津さま。もうしばらくご辛坊ください」

 あてがったナイフをぴくりとも動かすことなく、岩泉さんは笑った。そして一呼吸おいてから今度は黒宮くんのほうをむいた。
 
 
「坊っちゃんも、そろそろ真実を打ち明けるべきです。二重人格は演技であることを」


「──ふぇええ!? 演技ぃいいッ!?」


 誰よりもボクが一番驚いて声をあげてしまった。


 黒宮くんと宮田くんが同じ人格──。


 ──ああ、でも二人とも同じぐらい好きだから、今さら演技だったとしても別になんてことないか。
 むしろ自分の意思でパキパキと使い分けられていたなんて凄すぎる。超絶イケてる俳優さんになれちゃうかも。

 でもなぁ、ずっとボクだけの徹斗きゅんでいてほしいから、台本の無いホームドラマをボクと永遠に繰り広げてほしい。

 だから、なんの問題もなし。オッケー!

 ──と、ボクのなかでは数秒後にはスッキリと答えが出た。


 なのに、誰よりも煮え切らない──むしろ煮えたぎった──表情をしていたのは黒宮くんだった。


「演技などではないッ!」


 うなるような声を上げた彼は素早く駆け出し、岩泉さんの手をはらうと一瞬でナイフを奪い取った。
 アクション映画のクライマックスの瞬間を見ているようで本当に素敵。

 けれど、観客であるはずのボクは気づいたら黒宮くんの腕のなかにすっぽりおさまっていた。

「ありゃ?」

「動くなッ!」

 ふたたび捕まったボクの首にふたたびナイフがつきつけられる。

(はわわわわわ……! 何回捕まっちゃってるのボクったら!)

 しかも、さっきとは違って首のシワに刃がジャストフィット。なんならちょっと食い込んじゃってる。
 やばい。ちょびっと、痛いかもしれない。

 岩泉さんとは違って明らかな殺意があるよ黒宮きゅん。

  
 黒宮くんは泰介さんと岩泉さんを交互に睨みつけながら言う。
 威嚇しながらも、せつせつと悲しげに。

「幼い頃は、たしかにわざと他人になりきったフリをしていた。そうやってお前たちの気を引いていた。……だが、いまは違う。ワタシはワタシ。徹斗は徹斗だ。ふたりでひとつ、なぜそれを認めてくれない」

「徹斗……」

「坊っちゃん」

「お前たち大人は、そうやっていつも都合のいいようにワタシ達をコントロールしようとした。……だが、もう限界だ」

 なにか大きなものを諦めるように黒宮くんは、ふーっと肩で溜息をつく。

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