白い宮田きゅんも黒い宮田きゅんもどっちも大好きすぎてボクはもうヘンタイです!

雨宮くもり

文字の大きさ
上 下
79 / 84
19 もっとピンチです!!

1

しおりを挟む

 

「──ぎゃっ!?」

 まるでボクの悲鳴を合図にしたかのごとく、まばゆい光が部屋にともった。あまりの明暗さでくらんだボクは思わずぎゅっと目をつぶった。

 恐怖と緊張で縮こまった身体にロープが食い込んで痛い──と、思った次の瞬間には痛みがまるでカサブタのようにぺろりとはがれた。

「へ?」

「ケガはないか、アイス」

 そう言ってボクの肩を叩いたのは、燃えるように熱い手のひら。
 そして、ボクの恋心を見事射抜いた冷たすぎる視線。意地の悪い笑みまじりの優雅な口元。


「黒宮きゅん……!!!」


 またしてもボクを助けに来てくれただなんて、王子様すぎる。
 でも、ボクの王子様はまるで女王様のごとく、四つん這い状態の泰介さんの背中を踏みつけている最中だった。
 泰介さんは怒りにガチガチと震え、ぴっしりとセットされた乱れなき七三頭がみるみるうちにほどけていく。


「クッ……わたしを足蹴にするとは……なんと品の悪い……」

「フン。見たくもないものを踏んだだけだ」

 
「ほざくな! わたしの大っっっっ切な息子に取り憑いた罪深き悪魔が!」

「思い通りになるときしか息子扱いできないクソ野郎が! 笑わせんな!」

「なんだその態度はああああッ」

 泰介さんはいっぺんに身をひるがえして黒宮くんの足首をつかむと、彼の脚を引きずり下ろすように脇へと抱えこんだ。

「お前はわたしの言う通りにすることだけが存在理由! はむかうとは何事!」

「誰が決めたそんな理由ぅううう!」

 体のバランスを崩した黒宮くんもタダでは転ばず、泰介さんのアゴを抱え込むようにロックするとグッと締め上げる。


「わはー……しゅごい……夢の親子プロレスだあ……間に挟まれたい……」

 親子二人にみっちり挟まれて、二人が繰り出す攻撃を全部ボクが受け止めちゃいたい。最高の親子サンドイッチだ。

 そんなことを考えちゃうからボクはレフリー役になることも忘れ、全裸のまんまでぽーっと眺めるしかなかった。
 

「──おやおや。いけませんね、旦那様も坊っちゃんも。ケンカが少々激しいようで」


 頭の後ろから聞こえた穏やかな声。
 なんの気配もなく、あまりにも急に聞こえた。

 ボクは心臓が止まるぐらいにびっくりして振り返ろうとした──けど、首筋にぴとりとあてがわれた冷たさが心臓以上のものをストップさせる。


「まったく貴方がたは……。こんな堂々巡りを何度繰り返すおつもりなのでしょうか? いつまで経っても歩み寄ろうとすらしない」


 ──時間がとまったかのようだった。


「終わらないケンカとは、すなわち戦争。……と、すれば尊い犠牲が出るまで終わらないのでしょうか?」


 取っ組み合いをしていた二人さえも手を止め、握りあったままで、まじまじとこちらを見つめている。

 あまりにも無機質で、あまりにも無慈悲で、みるみるうちにボクの体温を奪うもの──。

 ついさっきまでボクの玉にあてがわれていたはずのナイフが、目の下ほんの数センチのところでギラギラと光を放っている。


「いい加減になさってください」


 ボクの首にナイフを押し当て、微笑んでいるのは執事の岩泉さんだった。
 

「待て! そいつを巻き込まないでくれ!」


 先に反応したのは黒宮くんだった。けれど、岩泉さんは微笑んだままなにも言わない。
 むっすりと腕組みしている泰介さんのリアクションを待っているようだった。

「貴様……。妙なことをすれば、主人であるわたしの責任になるということを分かってやっているのか」

「もちろんです、旦那様。ですがワタクシは生前の奥様に頼まれていたのですよ。坊っちゃんに大切な人ができたとき、旦那様がワガママで身勝手な振る舞いをするようだったら容赦なく脅しなさいと」

「ムダなことを……!」


 ──なんだか宮田家だけで話がグングン進んでるけど、ボクってなんのために超ピンチになってるの!?
 ってツッコミを入れることもできずに息を殺しているしかなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

親衛隊は、推しから『選ばれる』までは推しに自分の気持ちを伝えてはいけないルール

雨宮里玖
BL
エリート高校の親衛隊プラスα×平凡無自覚総受け 《あらすじ》 4月。平凡な吉良は、楯山に告白している川上の姿を偶然目撃してしまった。遠目だが二人はイイ感じに見えて告白は成功したようだった。 そのことで、吉良は二年間ずっと学生寮の同室者だった楯山に自分が特別な感情を抱いていたのではないかと思い——。 平凡無自覚な受けの総愛され全寮制学園ライフの物語。

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます

ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜 名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。 愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に… 「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」 美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。 🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶 応援していただいたみなさまのおかげです。 本当にありがとうございました!

処理中です...