77 / 84
18 大ピンチです!
2
しおりを挟む
◆ ◆ ◆
「……んひ?」
口からヨダレがべろんと垂れた気がして、反射的にすすりあげたと同時に『ここどこだっけ?』と目が覚めた。
なんだかちょっと寒い。首から下がスースーする。スースーというかなんにもないというか──。
「はっ!?」
ボクはすっぽんぽんでパイプイスに座っていた。下着もパンツもなく、白色のスニーカーソックスだけ履いたまま。
変態ファッションでの放置プレイか。
これならいっそ、全裸放置のほうが潔いのに。
靴下も脱ぎたい──と、動こうとしたけれどなにも動けなかった。肩の骨がギクッと鳴っただけ。びくともしない。
両手が背もたれの後ろで縛り付けられている──らしい。
いくら力を入れても古新聞を縛る紐っぽい感じ。とってもギシギシする。動けば動くほど食い込んじゃってイケナイ気持ちになる。
ならば足をすり合わせて靴下だけでも脱ごうと試みた──が、足首同士もぎっちりお行儀よく縛り付けられていて動けない。
「んぎゃああああ! こりゃなんですかあああ!!! みっちりむっちり束縛系SMシチュエーションですかぁああああ!!!」
これだけ入念に縛っておいて、お目々もお口も自由にさせちゃうなんて罪深い。
どこからどう見ても見覚えのないお部屋。ボク以外になんにもない。肝心なベッドもない。窓すらない。まるで真っ暗なカラオケボックスみたい。防音設備バッチリの特別部屋なのかもしれない。
「ふむふむ。なるほど……SM専用スペースなのかな……」
宮田きゅんったら真面目でウブなのにかなりブッ飛んだ性癖してたんだね──せっかくアブノーマルに攻められちゃうのなら、亀甲縛りとか三角木馬にも挑戦してみたいな──って妄想が花開きかけた。
そういえば意識を失う前に、三角木馬なんかよりもヘンテコな夢を見た気がする。
トイレに行きたくてドアを開けたら尾花沢先生がいて、僕を誘拐しようとしていたような──。
まあ、そんなわけない!
早く来て来て宮田きゅん!
マゾいボクにおイタなご褒美、いっぱいくだひゃい!
いまかいまかと悶々ソワソワと待っていると、目の前の扉がじれったく開いた。
脳天までくらむほどのまばゆい光のなかにいたのは、スラリとした脚長のシルエット──。
「目が覚めたか、Badboy」
遥かな高見からボクを睨みつけてくれるのはドSモードの宮田きゅん──にしては、ちょっと老けて見えるような。
黒地に銀色のストライプスーツをビシッと着こなし、腕を組んでいる姿はあまりにも大人の貫禄がありすぎる。
「わたしから徹斗を奪うとは。たいした勇気だボーイ。褒めてやろう。だが、つめが甘かったようだな」
「……へ? え? 宮田きゅん?? みや……え?」
「混乱しているか。無理もない。わたしだって手荒な真似はしたくなかったのだが、すべては徹斗のため。お赦し願おう」
徹斗徹斗って言う度、誇らしげに口の端っこをゆるめて笑うその人は間違いなく──。
「オトーーーーサマっ!?!?」
おかしいおかしい絶対におかしい。ボクはとっくにお屋敷を脱出して宮田くんと愛の逃避行を果たしたはず。
なのに、なんでどうしてSM部屋にお義父様がいらっしゃるのだ。
「はわわわわ……」
まさかボクが夢だと思っていたものはすべてノンフィクション。
宮田きゅんとのSMプレイこそがめくるめくファンタジー。
なんという絶望。
「やだやだああああ! ギッチミチの亀甲縛りされてみたかったのにぃいいいい!!!」
「野蛮な願望を声に出すな! 耳が腐る!」
泰介さんはボクのあたまを鷲掴みにすると、まるで神社の鈴を鳴らすかのように左右に振った。
そんなことしたって空っぽな脳ミソは空っぽなままなのに。
「貴様はやはり、徹斗を穢しかねない危険因子のようだな」
捕らえた害虫を殺す直前の数秒間のような目で泰介さんはボクを見下す。
あまりに凄みがきいててゾクゾクしちゃう。見えない縄でぐるぐる巻きにされちゃってる気分だ。もっとキツめにしてくれてもいいのに──。
「……んひ?」
口からヨダレがべろんと垂れた気がして、反射的にすすりあげたと同時に『ここどこだっけ?』と目が覚めた。
なんだかちょっと寒い。首から下がスースーする。スースーというかなんにもないというか──。
「はっ!?」
ボクはすっぽんぽんでパイプイスに座っていた。下着もパンツもなく、白色のスニーカーソックスだけ履いたまま。
変態ファッションでの放置プレイか。
これならいっそ、全裸放置のほうが潔いのに。
靴下も脱ぎたい──と、動こうとしたけれどなにも動けなかった。肩の骨がギクッと鳴っただけ。びくともしない。
両手が背もたれの後ろで縛り付けられている──らしい。
いくら力を入れても古新聞を縛る紐っぽい感じ。とってもギシギシする。動けば動くほど食い込んじゃってイケナイ気持ちになる。
ならば足をすり合わせて靴下だけでも脱ごうと試みた──が、足首同士もぎっちりお行儀よく縛り付けられていて動けない。
「んぎゃああああ! こりゃなんですかあああ!!! みっちりむっちり束縛系SMシチュエーションですかぁああああ!!!」
これだけ入念に縛っておいて、お目々もお口も自由にさせちゃうなんて罪深い。
どこからどう見ても見覚えのないお部屋。ボク以外になんにもない。肝心なベッドもない。窓すらない。まるで真っ暗なカラオケボックスみたい。防音設備バッチリの特別部屋なのかもしれない。
「ふむふむ。なるほど……SM専用スペースなのかな……」
宮田きゅんったら真面目でウブなのにかなりブッ飛んだ性癖してたんだね──せっかくアブノーマルに攻められちゃうのなら、亀甲縛りとか三角木馬にも挑戦してみたいな──って妄想が花開きかけた。
そういえば意識を失う前に、三角木馬なんかよりもヘンテコな夢を見た気がする。
トイレに行きたくてドアを開けたら尾花沢先生がいて、僕を誘拐しようとしていたような──。
まあ、そんなわけない!
早く来て来て宮田きゅん!
マゾいボクにおイタなご褒美、いっぱいくだひゃい!
いまかいまかと悶々ソワソワと待っていると、目の前の扉がじれったく開いた。
脳天までくらむほどのまばゆい光のなかにいたのは、スラリとした脚長のシルエット──。
「目が覚めたか、Badboy」
遥かな高見からボクを睨みつけてくれるのはドSモードの宮田きゅん──にしては、ちょっと老けて見えるような。
黒地に銀色のストライプスーツをビシッと着こなし、腕を組んでいる姿はあまりにも大人の貫禄がありすぎる。
「わたしから徹斗を奪うとは。たいした勇気だボーイ。褒めてやろう。だが、つめが甘かったようだな」
「……へ? え? 宮田きゅん?? みや……え?」
「混乱しているか。無理もない。わたしだって手荒な真似はしたくなかったのだが、すべては徹斗のため。お赦し願おう」
徹斗徹斗って言う度、誇らしげに口の端っこをゆるめて笑うその人は間違いなく──。
「オトーーーーサマっ!?!?」
おかしいおかしい絶対におかしい。ボクはとっくにお屋敷を脱出して宮田くんと愛の逃避行を果たしたはず。
なのに、なんでどうしてSM部屋にお義父様がいらっしゃるのだ。
「はわわわわ……」
まさかボクが夢だと思っていたものはすべてノンフィクション。
宮田きゅんとのSMプレイこそがめくるめくファンタジー。
なんという絶望。
「やだやだああああ! ギッチミチの亀甲縛りされてみたかったのにぃいいいい!!!」
「野蛮な願望を声に出すな! 耳が腐る!」
泰介さんはボクのあたまを鷲掴みにすると、まるで神社の鈴を鳴らすかのように左右に振った。
そんなことしたって空っぽな脳ミソは空っぽなままなのに。
「貴様はやはり、徹斗を穢しかねない危険因子のようだな」
捕らえた害虫を殺す直前の数秒間のような目で泰介さんはボクを見下す。
あまりに凄みがきいててゾクゾクしちゃう。見えない縄でぐるぐる巻きにされちゃってる気分だ。もっとキツめにしてくれてもいいのに──。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

親衛隊は、推しから『選ばれる』までは推しに自分の気持ちを伝えてはいけないルール
雨宮里玖
BL
エリート高校の親衛隊プラスα×平凡無自覚総受け
《あらすじ》
4月。平凡な吉良は、楯山に告白している川上の姿を偶然目撃してしまった。遠目だが二人はイイ感じに見えて告白は成功したようだった。
そのことで、吉良は二年間ずっと学生寮の同室者だった楯山に自分が特別な感情を抱いていたのではないかと思い——。
平凡無自覚な受けの総愛され全寮制学園ライフの物語。


元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる