白い宮田きゅんも黒い宮田きゅんもどっちも大好きすぎてボクはもうヘンタイです!

雨宮くもり

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18 大ピンチです!

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◆ ◆ ◆


「……んひ?」

 口からヨダレがべろんと垂れた気がして、反射的にすすりあげたと同時に『ここどこだっけ?』と目が覚めた。
 なんだかちょっと寒い。首から下がスースーする。スースーというかなんにもないというか──。


「はっ!?」


 ボクはすっぽんぽんでパイプイスに座っていた。下着もパンツもなく、白色のスニーカーソックスだけ履いたまま。
 変態ファッションでの放置プレイか。
 これならいっそ、全裸放置のほうが潔いのに。

 靴下も脱ぎたい──と、動こうとしたけれどなにも動けなかった。肩の骨がギクッと鳴っただけ。びくともしない。
 両手が背もたれの後ろで縛り付けられている──らしい。

 いくら力を入れても古新聞を縛る紐っぽい感じ。とってもギシギシする。動けば動くほど食い込んじゃってイケナイ気持ちになる。

 ならば足をすり合わせて靴下だけでも脱ごうと試みた──が、足首同士もぎっちりお行儀よく縛り付けられていて動けない。
 
 

「んぎゃああああ! こりゃなんですかあああ!!! みっちりむっちり束縛系SMシチュエーションですかぁああああ!!!」


 これだけ入念に縛っておいて、お目々もお口も自由にさせちゃうなんて罪深い。

 どこからどう見ても見覚えのないお部屋。ボク以外になんにもない。肝心なベッドもない。窓すらない。まるで真っ暗なカラオケボックスみたい。防音設備バッチリの特別部屋なのかもしれない。

「ふむふむ。なるほど……SM専用スペースなのかな……」

 宮田きゅんったら真面目でウブなのにかなりブッ飛んだ性癖してたんだね──せっかくアブノーマルに攻められちゃうのなら、亀甲縛りとか三角木馬にも挑戦してみたいな──って妄想が花開きかけた。


 そういえば意識を失う前に、三角木馬なんかよりもヘンテコな夢を見た気がする。

 トイレに行きたくてドアを開けたら尾花沢先生がいて、僕を誘拐しようとしていたような──。


 まあ、そんなわけない!


 早く来て来て宮田きゅん!
 マゾいボクにおイタなご褒美、いっぱいくだひゃい!

 
 いまかいまかと悶々ソワソワと待っていると、目の前の扉がじれったく開いた。
 脳天までくらむほどのまばゆい光のなかにいたのは、スラリとした脚長のシルエット──。


「目が覚めたか、Badboy」


 遥かな高見からボクを睨みつけてくれるのはドSモードの宮田きゅん──にしては、ちょっと老けて見えるような。
 黒地に銀色のストライプスーツをビシッと着こなし、腕を組んでいる姿はあまりにも大人の貫禄がありすぎる。

「わたしから徹斗を奪うとは。たいした勇気だボーイ。褒めてやろう。だが、つめが甘かったようだな」

「……へ? え? 宮田きゅん?? みや……え?」

「混乱しているか。無理もない。わたしだって手荒な真似はしたくなかったのだが、すべては徹斗のため。お赦し願おう」

 徹斗徹斗って言う度、誇らしげに口の端っこをゆるめて笑うその人は間違いなく──。


「オトーーーーサマっ!?!?」


 おかしいおかしい絶対におかしい。ボクはとっくにお屋敷を脱出して宮田くんと愛の逃避行を果たしたはず。
 なのに、なんでどうしてSM部屋にお義父様がいらっしゃるのだ。

 
「はわわわわ……」

 まさかボクが夢だと思っていたものはすべてノンフィクション。
 宮田きゅんとのSMプレイこそがめくるめくファンタジー。

 なんという絶望。


「やだやだああああ! ギッチミチの亀甲縛りされてみたかったのにぃいいいい!!!」

「野蛮な願望を声に出すな! 耳が腐る!」

 泰介さんはボクのあたまを鷲掴みにすると、まるで神社の鈴を鳴らすかのように左右に振った。
 そんなことしたって空っぽな脳ミソは空っぽなままなのに。


「貴様はやはり、徹斗を穢しかねない危険因子のようだな」

 捕らえた害虫を殺す直前の数秒間のような目で泰介さんはボクを見下す。
 あまりに凄みがきいててゾクゾクしちゃう。見えない縄でぐるぐる巻きにされちゃってる気分だ。もっとキツめにしてくれてもいいのに──。

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