白い宮田きゅんも黒い宮田きゅんもどっちも大好きすぎてボクはもうヘンタイです!

雨宮くもり

文字の大きさ
上 下
72 / 84
17 しちゃったね、駆け落ち

1

しおりを挟む




「……あ、会津くん」

「うん。なあに宮田くん?」

「今から……キミを、な、名前で呼んでみても、構わない……だろうか……?」

「もちろん。呼んで」

「……で、では、やってみよう。……ゆ、ゆーき……祐希、くん……」

「なぁに、徹斗きゅん」

「どぅあああああああ! ダメだ! これではすぐに体が熱暴走をぉおおお!」


 以前も二人で来たホテルの和室スイートルームにて、ボクたちはつつましく膝を突き合わせていた。

 本当はぎゅっと抱き合って耳元で甘いことばをささやきあってもいいはずなのに、まだ微妙な照れがある。
 指と指をつないで、控えめにニギニギし合うので精一杯。せっせっせーのよいよいよい状態。

 

 あのあと二人でお屋敷の廊下を走りに走り、適当な部屋に飛び込んでサッと着替えてから、外界へと飛び出した。
 手をつないで走りながら『これって駆け落ちみたい』とうっとりしていたとき、宮田くんが「まるで駆け落ちだね」と微笑んだのがテレパシーみたいで嬉しかった。


 白色の長袖シャツに黒色のチノパンという宮田くんの白黒人格そのもののような服装は、とてもよく似合っている。
 素材が良い分、ごちゃごちゃとした飾りは必要ない。

 唯一、肌に描かれた例の樹が入れ墨のようで不気味だった。

 早く消してしまったほうがいいけれど、そのためにはお風呂に入る必要がある。
 お風呂に入るということはつまり、いろんなところをキレイにする。
 キレイになったら、あとは──。


 むちゃくちゃ照れちゃう。

 

「会津くん……」

「あれ? 祐希って呼んでくれないの?」

「それは……心臓がおかしくなるのでもう少し後にさせてくれたまえ。そ、それよりも」

「うん」

「抱きしめても、構わないだろうか」

 自らの太ももを両手でソワソワとさすりつつ、申し訳なさそうにお断りを入れてくる徹斗きゅん。むちゃくちゃかわいい。
 返事はとうぜん──。

「いいよ」

 ボクがにっこりうなずいてみると、宮田くんは弾かれたようにぴょんと立ち上がった。上手に誤魔化したつもりでも、真っ赤な耳が見えてるよ。
 恥ずかしくって視線すら合わせていられない──そう言いたげだ。

 白いシャツの背中は汗でしっとりと透け、肩甲骨のラインが雄々しく浮かび上がっている。急いで逃げてきたせいで、彼はいま下着を身に着けていないのだ。

「くっ、くくくくくくクーラーの設定を15℃にしておかなければああああっ!」

「キンッキンだね……」

 
 宮田くんはよっぽど体温を上げたくないらしい。念には念を入れてクーラーの吹き出し口の真下までボクを連れてくると、ぎこちなく手を広げた。

「……で、では……い、いくよ……」

「うん」

 両腕の動きがまるでクレーンゲームのアームのようにカクカクしてじれったい。
 あまりにも寒すぎて硬直している──のではなく、猛烈な緊張があるせいだろう。
 ボクを抱きしめようとする宮田くんのアームの力はあまりにも弱々しくて、情けない。これが本当のクレーンゲームだったら、ボクはおしりすら持ち上がらないだろう。

 初々しいのはかわいい。
 でもなんだか、もどかしい。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

親衛隊は、推しから『選ばれる』までは推しに自分の気持ちを伝えてはいけないルール

雨宮里玖
BL
エリート高校の親衛隊プラスα×平凡無自覚総受け 《あらすじ》 4月。平凡な吉良は、楯山に告白している川上の姿を偶然目撃してしまった。遠目だが二人はイイ感じに見えて告白は成功したようだった。 そのことで、吉良は二年間ずっと学生寮の同室者だった楯山に自分が特別な感情を抱いていたのではないかと思い——。 平凡無自覚な受けの総愛され全寮制学園ライフの物語。

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...