白い宮田きゅんも黒い宮田きゅんもどっちも大好きすぎてボクはもうヘンタイです!

雨宮くもり

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16 オトーーサマッ!

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 びっくりしすぎて白目をむきかけているボクに、お義父様はハッハッハと笑いかけてくる。

「そんなところにへばりついているということは徹斗の部屋をのぞきたいのか、ボーイよ。そうであろう、のぞいてでも見たい。当然だ。わたしの徹斗はとても素晴らしい。至極当然。なんてったってこのわたしの最高傑作であるからな! ハッハッハ!」

「ワ、ハハハハ……」

 お義父様こと泰介さん、怖い人かと思っていたけれど違うみたいだ。『徹斗』の名前を口にすればするほど、ものすごく目尻が下がって優しい雰囲気になっていく。究極の親バカって感じがする。
 宮田きゅんが素敵なのは正真正銘の一糸乱れなき世界の超真理だから、そりゃ親バカにもなっちゃうか。

「傑作はコソコソのぞくよりも、くまなく直視したほうが味わい深いものだ。わたしが直視を許可する。一緒に来なさい」

「ヘッ!?!?」

 泰介さんは片手でボクを雑巾のようにつまんで持ち上げると、反対の手で宮田きゅんの部屋のドアを叩いた。
 たった一回トン、と。
 ノックではなく扉の表面にべったりと手のひらを置く、特殊な合図。

 間髪いれずに返ってきた「はい」の声は、とても清らかだった。
 たった一言なのに歓迎されていると分かる──でも何か別の感情がこもっているようにも聞こえる──不思議な声。

 
「──徹斗。今日はお前の素晴らしさを見物したいという客人も一緒だ。ぞんぶんにお前を見せてさしあげなさい」

「はい」

 当たり前だけど、宮田くんのお部屋は宮田くんの匂いがする。いつもベッドメイキングのときに入ってはいるけど、本人がいるときに入るのはこれが初めて。
 当然、いつもより濃厚な香りがする。
 脳の奥がすーっと涼しくなるような爽やかなミントの香りだ。
 呼吸するのがもったいない。
 緊張と酸欠で心臓がバクバクしすぎてさっそく呼吸困難になりかけながら、勇気を出して顔を上げた。

 拝見、宮田くんのキレイなお顔──。
 でも真っ先に見えたのは、彼の脚だった。白いながらも無駄なく引き締まったふくらはぎ。かぶりつきたくなるけど、歯型を残すのは申し訳ないからぺろぺろ舐めたいふくらはぎ。

 へ? 足?

 ボクはいまちょっとへっぴり腰で前かがみだ──ほぼ通常の視線の高さなのに、どうしてド正面に宮田きゅんの脚が見えているのか。
 もしかして、一夜にして宮田きゅんが身長3メートル超に成長した──わけではない。

 答えはすぐに出た。


「本当にお前はわたしの最高傑作だ、徹斗」

「ありがとうございます。すべてはお父様のおかげです」

 宮田くんはまるですこぶる価値の高い美術品のように石台の上に立ち、ボクらを見下ろしていた。
 生きたまま石像にされているかのごとく、生まれたままの姿だ。つまり、服を着ていない。

 
「じゅっ、ぐ!? げほっ! げほげほぉおお!」

 煩悩のお漏らしのごとくドバっとあふれたヨダレをとっさに飲み込もうとして、失敗した。足りない酸素を求めた肺の動きとごちゃごちゃになって、喉奥の変なところにヨダレが流れ込む。
 またたく間にボクは溺れた。陸で盛大に溺れた。

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