白い宮田きゅんも黒い宮田きゅんもどっちも大好きすぎてボクはもうヘンタイです!

雨宮くもり

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15 執事見習いになりました!

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(困ったにゃ……)

 このままじゃバイト代が貯まっていく一方だ。行く予定もないのに宮田くんとのデート費用だけが膨らんでいく。

 このままじゃダメだ!

 悶々としながらだと作業が妙にはかどる。お掃除の腕がぐんぐんレベルアップしていく。
 おまけに岩泉さんが褒めちぎってくれるから、やることなすことすべてが楽しい。


「アイスくんはとても真面目でよく働いてくれますね、助かりますよ。旦那様にもお伝えしておきます。……以前勤めていた筋トレバカとは大違いです。ハッハッハ」

「筋トレバカ……」

 ──もしかしなくても尾花沢先生のことか。そういえば宮田家の元執事だって言ってたっけ。
 もしや、お屋敷の仕事がうまくできなくて宮田くんの監視係にされたのだろうか。

 ボクは真面目に頑張らなくちゃ──そんなことを思うからますます執事としてのスキルが上がっていく。

 お屋敷中の窓を舐めるようにハァハァして、丁寧にゴシゴシキュッキッしているうちに、二週間が過ぎてしまった。

 
◆ ◆ ◆


「──アイス!! 貴様なにをしているッ!ワタシの言うとおりに動く気がないのか!!!」

「んぎゃああああごめんなひゃいだけどしあわひぇええええ!!!!」

 ある日の真夜中、黒宮くんはまた僕のお部屋に忍び込んできた。
 お仕事に疲れてエロいこともせずスヤスヤしていた僕は、もれなく太ももギロチンの刑に処されてしまった。

「だってだって、宮田家の執事ライフめっっっちゃ楽しいんだもん! 一生このままでも良い気がひてましゅ! 高校辞めて宮田きゅんのベッドメイキングずっとしてたいんだもんっ!」

「ワタシが想像していた以上のクソバカだったな……。どいつもこいつも……」

 ボクの頭を挟んだまま、黒宮くんはチッと舌を打つ。

「これを見ろ」

 リュックから取り出したものでボクの頭をポンと叩いた黒宮くんは、深い溜息と共に起き上がる。
 眠い目をこすりながらボクが手にしたのは、とても上質そうな装丁のノート。
 どこから見てもいいというので開いてみると、

 ──『会津くん会津くん会津くん会津くん会津くん会津くん会津くん会津くん会津くん会津くん会津くん会津くん会津くん会津くん会津くん会津くん会津くん会津くん会津くん』


 一旦閉じた。

 もっかい開いた。


 ──『会津くん』

 

「なに、これ……え?」

「徹斗の夏期講習のノートだ」

「会津くんって……?」

「残念ながらお前のことだろうな」

 まさかと思って他のページも開いてみると、どこもかしこもびっしりと一糸乱れぬ『会津くん』の文字。独裁国家の兵隊みたいに見えてしまう。
 とめはねはらいのしっかりした美文字がかすむほどの狂気。

 100ページぐらいある厚手のノートの半分以上が『会津くん』で埋まっている。
 さすがのボクだって自分の名字をこんなに何度も書いたことはない。

「これでもお前は『一生執事でいい』とほざくのか?」

「ごめんにゃひゃい」


 本当は近くにいるとは知らず、宮田くんは毎日ボクのことを想って苦しんでる。
 それなのにボクだけが浮かれちゃって、バカみたいだ。

 なんとかしてあげなくちゃ──。

 
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