白い宮田きゅんも黒い宮田きゅんもどっちも大好きすぎてボクはもうヘンタイです!

雨宮くもり

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12 宮田くん救出大作戦

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 なんてことを考えていると、先にボクに視線をくれたのは尾花沢先生だった。
 毒ばかり吐くお口がゆったりと意味深に広がる。

 あれなんかやばいかも──そう思った次の瞬間には彼の太すぎる腕が吹っ飛んできて、ボクはマグロのごとくポーンと釣り上げられていた。

「あんた、この坊やと何度も遊んでるわね。いつもなら一回ヤったらすぐ捨てるくせに。どうしてなのかしら?」

「ぉぐっ!?」

 釣り上げただけならまだしも、先生は芋虫みたいな中指を釣り針みたいに折り曲げてボクのお口へ突っ込んでくる。

 
 大好きな人のアソコなら喜んでちゅーちゅー吸えたボクだけど、好きでもない人の指をむりやり咥えさせられるのは気持ち悪い。
 歯医者さんで歯を削られるときに突っ込まれるチューブみたいな風味と違和感。しかもしょっぱい。オエッとくる。

 黒宮くんはなんの動揺もしない。ただ冷ややかに目を細めた。

「せっかく人質を取ったところで申し訳ないが、そいつに惚れ込んでいるのはワタシではない。徹斗のほうだ」

「ほ!?!?」

「どっちでもいいわ。この子、うるさくって目障りだからとぉってもイタァイ目にあわせちゃおうと思って」

「ひはぁあああ!?」

「そうねぇ。このまま前歯へし折って二度と徹ちゃまに顔向けできなくなるレベルのマヌケ面にしちゃいましょ」

「もぬぇええっ!?!?」

 そんな刑に処されるなんて、ボク聞いてない。でも、いまさら拒否しようと思っても暴れることなんてできない。
 口内に突っ込まれたままの指がボクの裏前歯の裏側をロックオンした。缶ジュースのプルタブを押し上げるときみたいに力を入れてくる。

「んふぉおお! ふぉおおう!!」

「ごめんなさいねぇ。徹ちゃまのこれからのためだからぁ。恨まないでねぇ」

「ふーーーおおおお!!」

 力づくであらぬ方向に曲げられていく歯はギシギシときしみ、頬骨にまで圧力が伝わる。鉄臭いヨダレまで垂れてきて──。

 

「──待ってくれたまえ」


 黒宮くんにしては丁寧で落ち着いた声が、ふっと空気を冷やした。

「わたし達の件と会津くんにはなんの関係もない。どうかその手を放してあげてほしい。今すぐに」

「あら、もしかして徹ちゃまに戻った?」

「そうだ」

「へぇ……、体温を下げなくても徹ちゃまに戻れるなんてねぇ」

「会津くんを傷つけたくはない──彼と考えが一致したせいだ。さあ、放してあげてくれ」

「ふーん。珍しいこともあるもんね。はいはい。分かりました!」

「──ぶへっ!」

 しょっぱい怪力芋虫はあっさりと口から出ていった。

「勘違いしないでちょうだいね。あたしだってこんな力技のおしおきイヤだったのよ。指に傷がついたら針仕事できなくなっちゃうもの」

 尾花沢先生は気取ったように言いながらポケットからハンカチを取り出し、自らの指を入念にぬぐい始めた。
 ピンクゴールド色のシルク生地にはお手製の薔薇の刺繍。

「……でもね、あたしの苦労を分かってちょうだいな、徹ちゃま。ついに旦那様から言われちゃったのよ、『最近の徹斗はずいぶんと無駄が多いようだが』ってね」

 
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