白い宮田きゅんも黒い宮田きゅんもどっちも大好きすぎてボクはもうヘンタイです！

10 ハジメテあげちゃいました※

4

　ボクはできるだけの笑顔をご用意して『昨日はありがとう』と真心を贈る準備をした。でも、

「……」

　振り返った宮田くんのいつもよりもどんよりと灰色で、暗くておかしくて──いや、それだけじゃない。
　一瞬はボクのほうにむけてくれた瞳をすぐさまナナメの方向に浮上させて何事もなかったように歩き出した。


（え……？）


　──宮田くん、ボクを無視した？

　そんなわけない。
　きっとボクがネガティブ思考すぎるせいでそう思っちゃっただけだ。


「──み、宮田くんっ！」

　昨夜の喘ぎ以来の大声を背中にぶつけてみる。ケホケホと咳が出て、とっさに口を両手でふさいだ。
　ボクなんかのツバが飛んで宮田くんのまっすぐな背筋を汚したら大変。

　
「…………」

　けれど、無反応だった。
　宮田くんは立ち止まってくれなかった。咳込むボクに『大丈夫かい』の慈悲もない。

「み……」

　ボクの席にたむろするやつらの間をすっと通りぬけ、自分の席に腰かけ授業の準備を始めている。

　完全に無視。


「……う」

　教室全体が時空ごと折りたたまれたようにぐにゅんと歪んで、走ったわけでもないのに心臓がバクバク鳴る。うるさい。
　ぎゅっと握りしめた手は、まるでボク自身のものじゃないみたいに冷たくて重たい。

「……っ、う、うう……」

　昼食を済ませて教室に入ってきた誰かが、ボクのほうをギョッとした目で見ては面倒そうに肩をすくめてコソコソと通り過ぎていく。

　誰一人として話しかけてくるやつはいない。


　ボクは宮田くんじゃないから。
　誰にも必要となんてされていないから。


　ボクなんて──。

　ボクなんて──。