白い宮田きゅんも黒い宮田きゅんもどっちも大好きすぎてボクはもうヘンタイです!

雨宮くもり

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1 好き好き宮田きゅん

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 宮田くんが長い足を伸ばし、ボクめがけて歩いてくる。いや、まさか。ボクなわけがない。きっとロッカーに用事が──。

会津あいづくん」

 月夜のギターがボクの名前をつまびいた。
 あまりにも良い声すぎて、感動のあまり全身の細胞がざわめく。

 あわあわするボクの目の前で宮田くんはぴたりと立ち止まり、ふんわりと微笑んだ。

「君の席は空いた。座りたまえ」

(……えっ!!??)

「あそこは君に与えられた席。座りたいときにはちゃんと自分の権利を主張するべきだ」

(あ、あ、あっ……!)

「遠慮することはない」

 驚きのあまりバキバキに硬直したボクの肩をほぐすように、ポン、と優しく触れてきた。
 この世界でもっとも尊く、慈悲深く、さりげない肩ポンだった。

「もし困ったことがあったときは、わたしに相談してくれ。きっと力になるよ」

 ボクが座れずに困っていたのに気づいて、席を奪い返してくれたのだ。


(宮田くん……いや、宮田さまっ……!)


 こんなボクなんかのために。
 さすが学級委員長。
 もはや神だ。この学園でもっとも神に等しい存在。それが彼だ。

 
 ボクは去りゆく宮田くんにむかって、思わず頭を下げた。

「……が、……っ、す……」

 『ありがとうごさいます』と言いたかったけど、今日一日まだ誰とも話していない口からはまともに声がでなかった。


 アァ、宮田くん。
 圧倒的弱者のボクにまで気を配ってくれる学級委員長。

 なんて素晴らしい。
 なんて紳士なのだろう。

 すっごく、かっこいい──。


 この運命ときをきっかけに、ボクはすっかり宮田くんに心奪われた。
 とりこであり、めろめろであり、熱狂的信者であり、非公式応援団であり、非公認しもべであり……。

 もはや昼ごはんなんてどうでもいい。
 まろやかに甘いりんごジュースを飲みながら、至福のため息をつく。

 ボクのこころにたわわに実った感情や衝動をすべて収穫し、体の真ん中でおもいっきり濃縮して、ありふれたことばに還元するならこうだ。

 フォーリン・ラブ──。



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