真っ白子犬の癒やし方

雨宮くもり

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11 癒える※

11-7 いっそ

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 あの地下牢のような場所でテルは何をされたか──それが語られることはなかった。
 口を開こうとしてはことばを詰まらせ、苦しそうに喉を鳴らし、やっとの思いで出た言葉は──、

「……勝手にイクと、蹴られるんです……、血が、出るまで……」

 抵抗もできず、助けてくれる味方もいない。
 ひとりぼっちのテルは、どんなことをされても耐えつづけるしかなかった。

 耐えれば耐えるほど、その姿を醜いと笑われ、変態だと罵られ、ときには暴力を受ける。衝撃と痛みで自制を失い、果ててしまったら最後、さらに汚物のごとく扱われる。


 そんな行為を半年に渡って毎晩──。


「……テル」


 もう、聞いていられなかった。
 テルは涙でいっぱいになり、オレの腕の中でひっきりなしに細かく震えている。

「……ぼく、死にたくて……つらくて……」

 言葉にならぬ思いを、背中に爪を立て訴えてくる。

「スフェーン様に『いっそ殺してください』と泣きついたら、あの水路に落とされました……」

「あの野郎ッ……」

「溺れる寸前だったとき、ツゲ先輩に助けられたんです。ぼくは向こうの寮であったことを何も話せなかった。それでもツゲ先輩は優しく『死ぬぐらいなら、うちにおいで』って、ぼくを拾ってくださいました」

「そうだったのか……」

「はい」


 深くうなずいたテルはとても苦しそうに笑った。

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