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10 光の矢
10-8 どこまでも
しおりを挟む命からがらやっとの思いで地上にたどり着いたときには、あやうく膝から崩れ落ちそうになった。
「せ、先輩!? 大丈夫ですか!?」
「ああっ、……、平気、だ……っ」
「ぼく、おりますっ!おろしてください!」
少し走っただけで汗だくになったオレを見て、テルは異常を察知したらしい。身をよじって腕の中から抜け出そうとする。
「ダメだ」
ぎゅっと力を込めて引き止めた。
いま、背中を見られるわけにはいかない。傷口からにじんだ血が今もじわじわと広がりつつあるそこを見たら、テルはきっと相当なショックを受けるに決まってる。
「でも、ぼく重いですからっ!!!」
「前に言っただろ、『腕一本でどこまでも運べそうだ』って。……いいから黙って抱っこされてろ」
「でも、でもっ……」
「頼む……このまま、そばに、いてくれ……離れないでくれ……頼む……」
「先輩」
「お前を抱きしめてるだけで、オレは癒やされてる……だから、大丈夫だ」
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