86 / 106
10 光の矢
10-7 鉤爪
しおりを挟む
「はあっ……はぁ、クソッ……」
思った以上に息が切れる。いつもならもっと早く走れるはずなのに足がちっとも前に出ない。
変な薬を飲まされた影響だろうか。治癒魔法では取り除ききれない毒素が体をめぐっているに違いない。
いつもの体力があれば──めぼしい武器があれば──クソ野郎のことなんてボコボコにしてやれるのに。
今はただ逃げることで精一杯の自分が悔しい。
『死ねッ死ねッ死ねッ!!!』
頭の上のほうからヒュッと風を切るような音が聞こえ、オレは反射的に背を丸めた。なにがあってもテルのことだけは傷一つつけることなく守りたい。
「……っ!」
まもなく、鉤爪のようなもので背中を引っかかれたが気にせず走った。
ヒュッ、ヒュッという鋭い音はそれから何度も聞こえた。その度に背中のいたるところが浅く引き裂かれていく。
(オレはどうなったっていい……、テルさえ無事なら……)
思った以上に息が切れる。いつもならもっと早く走れるはずなのに足がちっとも前に出ない。
変な薬を飲まされた影響だろうか。治癒魔法では取り除ききれない毒素が体をめぐっているに違いない。
いつもの体力があれば──めぼしい武器があれば──クソ野郎のことなんてボコボコにしてやれるのに。
今はただ逃げることで精一杯の自分が悔しい。
『死ねッ死ねッ死ねッ!!!』
頭の上のほうからヒュッと風を切るような音が聞こえ、オレは反射的に背を丸めた。なにがあってもテルのことだけは傷一つつけることなく守りたい。
「……っ!」
まもなく、鉤爪のようなもので背中を引っかかれたが気にせず走った。
ヒュッ、ヒュッという鋭い音はそれから何度も聞こえた。その度に背中のいたるところが浅く引き裂かれていく。
(オレはどうなったっていい……、テルさえ無事なら……)
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。
世界で一番優しいKNEELをあなたに
珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。
Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。
抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。
しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。
※Dom/Subユニバース独自設定有り
※やんわりモブレ有り
※Usual✕Sub
※ダイナミクスの変異あり
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
こじらせΩのふつうの婚活
深山恐竜
BL
宮間裕貴はΩとして生まれたが、Ωとしての生き方を受け入れられずにいた。
彼はヒートがないのをいいことに、ふつうのβと同じように大学へ行き、就職もした。
しかし、ある日ヒートがやってきてしまい、ふつうの生活がままならなくなってしまう。
裕貴は平穏な生活を取り戻すために婚活を始めるのだが、こじらせてる彼はなかなかうまくいかなくて…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる