真っ白子犬の癒やし方

雨宮くもり

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10 光の矢

10-7 鉤爪

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「はあっ……はぁ、クソッ……」

 思った以上に息が切れる。いつもならもっと早く走れるはずなのに足がちっとも前に出ない。
 変な薬を飲まされた影響だろうか。治癒魔法では取り除ききれない毒素が体をめぐっているに違いない。

 いつもの体力があれば──めぼしい武器があれば──クソ野郎のことなんてボコボコにしてやれるのに。
 今はただ逃げることで精一杯の自分が悔しい。

『死ねッ死ねッ死ねッ!!!』

 頭の上のほうからヒュッと風を切るような音が聞こえ、オレは反射的に背を丸めた。なにがあってもテルのことだけは傷一つつけることなく守りたい。

「……っ!」

 まもなく、鉤爪のようなもので背中を引っかかれたが気にせず走った。

 ヒュッ、ヒュッという鋭い音はそれから何度も聞こえた。その度に背中のいたるところが浅く引き裂かれていく。

(オレはどうなったっていい……、テルさえ無事なら……)

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