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10 光の矢
10-4 客のくせに
しおりを挟む「センパイッ!!!」
鉄の扉が開く音がして、まばゆい光を背に立っていたのは小さくて細くて白い人影。
頭上でピンと立った三角の耳が予感を確信に変えてくれる。
「テ、ル……」
その名を口にした瞬間、俺の中の何かが弾けた。視界がにじみ、涙がぼろぼろあふれてくる。
目の前にテルがいる驚きと安堵と、あらゆる液体まみれのぶざまな姿を見られてしまった情けなさで、息ができない。
「……ッ! いま助けますっ!」
純白のローブをひるがえしてテルが放ったまばゆい光の矢は、俺の両手を拘束していた鎖に見事当たった。
「よくも先輩をッ……クソど変態野郎っ!!」
かたわらでニヤついているスフェーンに、テルは全身を震わせて怒鳴った。
もう一度放たれた光の矢は雨あられのごとく降り注ぎ、薬の入ったケースをぐしゃぐしゃにブッ壊した。
「やれやれ、客人のくせに乱暴だなあ」
あきれたように髪をかきあげて笑ったスフェーンは、石のベッドから起き上がろうとするオレを──足腰にうまく力が入らなくて立ち上がれない──邪魔なゴミクズと言わんばかりに蹴落とした。
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