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10 光の矢
10-3 招待客
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◆ ◆ ◆
「おーい、おーい。起きろドブネズミ」
冷たい手で、ぺちぺち、と頬を叩かれた。
「う……」
目の前は、いまだに暗闇だった。
夜はまだ明けていない。
「気絶するほど抱かれて目が覚めた気分はどう?」
「……う、る……せ……」
「反抗できる元気があるなら良かった良かった。わたしが招待したあの子がもうすぐ来る頃だからね」
「……、は、ぐっ」
「もっと泣いてもらうよ」
意識を手放す前に味わったおぞましい感覚の数々が、背筋を駆け巡る。
この宴がまだ続くという絶望に、いまにも泣き叫んで気が狂ってしまいたいと願った。立ち向かうのではなく、逃げることを真っ先に考える──そんな弱い自分が許せなかった。鍛錬をさんざん重ねたはずなのに、体だけがたくましくなるばかり。心の根っこのほうは弱くて泣き虫な自分が残っている。
悔しさに歯をくいしばった。そのとき──、
「──キイチ先輩っ!」
テルの声だ。
その声は俺自身が作り出した幻に違いなかった。
聞こえるはずがない。分かっているのに──。
「おーい、おーい。起きろドブネズミ」
冷たい手で、ぺちぺち、と頬を叩かれた。
「う……」
目の前は、いまだに暗闇だった。
夜はまだ明けていない。
「気絶するほど抱かれて目が覚めた気分はどう?」
「……う、る……せ……」
「反抗できる元気があるなら良かった良かった。わたしが招待したあの子がもうすぐ来る頃だからね」
「……、は、ぐっ」
「もっと泣いてもらうよ」
意識を手放す前に味わったおぞましい感覚の数々が、背筋を駆け巡る。
この宴がまだ続くという絶望に、いまにも泣き叫んで気が狂ってしまいたいと願った。立ち向かうのではなく、逃げることを真っ先に考える──そんな弱い自分が許せなかった。鍛錬をさんざん重ねたはずなのに、体だけがたくましくなるばかり。心の根っこのほうは弱くて泣き虫な自分が残っている。
悔しさに歯をくいしばった。そのとき──、
「──キイチ先輩っ!」
テルの声だ。
その声は俺自身が作り出した幻に違いなかった。
聞こえるはずがない。分かっているのに──。
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