真っ白子犬の癒やし方

雨宮くもり

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エピローグ

12-2 まさか

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「……じゃあ、これを飲んでやる代わりに、質問に一つ答えてくれよ。正直に」

「なんだろうか?」

「お前、スフェーンに言い寄られてたんじゃねぇか? 好きだ好きだって迫られて困るから、俺やテルを使ってスフェーンを退学に追い込んだんじゃ……」

「ふははっ、そんなまさか」

 ツゲは穏やかな笑みを崩さない。

「じゃあ、俺がスフェーンに捕まったときなんで真っ先に助けに来てくれなかったんだよ。テルよりもお前が来たほうが話が早かったじゃねーか」

「寮長としてカドが立つ争いはしない主義でね」

「……スフェーンのやつ、俺を抱きながら何度も言ってたんだぜ。『ツゲ殿、ツゲ殿、あいしてる~』ってな」

 少し誇張したのはツゲを本気にさせるためだ。あいしてるなんて実際は言ってない。

 ガタン、と派手な音がしてイスが転がった。


「抱かれたのか、あの男に」


 ツゲは勢いよく立ち上がって机に足をぶつけたらしかった。だが、本人は痛そうなそぶりをせずにジッと俺を見下ろす。妙に据わった目をしている。


「そ、そりゃそうだろ……お前が助けに来ねぇから、いろいろ好き勝手されちまったんだから」

「どこだ! どこをどんなふうにされた!」


 様子がおかしい。後退る俺を追い詰めるようにぐいぐい迫ってくる。


「おいっ、待てって……! は、ハーブティー飲んでやるから、落ち着けって!」

「それとこれとは話が別だ! あんな世にも悪趣味で性格が最低の男にお前が大人しく抱かれたなんて──」


 じりじりと追いやられ、今にもベッドに押し倒されそうになった。冗談じゃない。
 コイツが本気になったらスフェーン以上のえげつない攻め方をしてくるに決まってる。
 迫りくる触手を振り払い、ハーブティーを一気に飲み干して「もういいな!? もう用事は済んだな!?」とツゲの部屋を飛び出した。

 スフェーンとなにがあったか知らないが、もう巻き込まれるのはまっぴらだ。

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