真っ白子犬の癒やし方

雨宮くもり

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8 西の寮長

8-1 昨晩は

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◆ ◆ ◆




「昨晩はずいぶんと激しかったようだね」


 朝っぱらから顔を合わせるなりゲスな寮長様だ。
 昨夜の反動で痛みを発している俺の腰に手を回し、なにが嬉しいのかニコニコしている。


「防音結界は張ったはずだぞ……なのに盗み聞きとは趣味が悪ぃんじゃねぇか?」


 ボロ寮はあちこち隙間だらけ。おんぼろベッドのきしみやあられもない大声が漏れないようにするのは到底無理だ。
 防音結界無しには自らの欲望を解放することなんてできない。
 なにより、ツゲにあれこれ聞かれるのがいやで入念に結界を張っておいた──はずだ。

「この寮はいわば私の体の一部。体内で行われる営みを感じられないわけがないだろう」

「変態め」

「私の調合した精力増強の薬が相当効果を発揮したようで嬉しいよ」

「クソッ! あのハーブティーやっぱり妙なもの入ってたのか……どおりでとまんねーわけだ……」

 ボヤいた俺のそばでツゲはまた微笑み、「キイチ」とささやく。

「なん──!」

 嫌味の一つでも言ってやろうかと睨みかけたとき、アゴをすくわれる。次の瞬間には、キスされていた。

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