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5 君の手
5-8 どいつもこいつも
しおりを挟む「前にも話したが、とある事情で私はあの子犬をうちの寮に招きたかったのだ。……だが、なかなか難航してね。何度も拒否されたよ」
「へぇ。口達者なお前が苦労するなんてよっぽどだな」
オレの前ではとても素直なテルが嫌がるなんて、よほどの理由があったのだろうか。
あるいは、善人のふりをしたツゲの胡散臭さを嗅ぎ分けていたのだろうか。
「キイチと同室にしようと提案したら一瞬で目の色が変わったのだ」
「マジかよ」
初めて部屋に来たとき、オレの迷惑になるとか言って拒否しまくってたから、無理やり連れてこられたとばかり思っていた。
まさかテル自身の希望だったなんて──。
「……」
舌の上に残る苦味が次第にやわらぎ、えもいわれぬ甘味へと変わっていくようだ。
「私が『キイチ』と口にしたときの豹変っぷりたるや。それまでの私の苦心は一体なんだったんだと屈辱を覚えるほどだった。……いつかあの子に同等の苦しみを味わってもらいたいものだ」
「襲うなよ」
「私はバカでデカくてむさ苦しい男にしか興味が無い」
どいつもこいつもド変態すぎるだろ。
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