真っ白子犬の癒やし方

雨宮くもり

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3 薔薇の園

3-5 心から

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「ところでどうだ。子犬との暮らしは」

「……別に」

「そのむさ苦しい顔にしっかり書いてあるぞ『すっげー楽しい』と。よかったじゃないか」

「ぐ」

 好き勝手に想像するな──と言ってやりたかったが、完全に当たっている。
 つくづくしゃくにさわる野郎だ。


「私の選択は間違っていなかったということだな。それは何よりだ」


 オレの部屋にテルを案内してきたのは、このツゲなのだ。

 東の寮長として君臨し、寮生たちをまるで我が子のように面倒見ている。
 勉強のサポートだけではなく、貴族と接する際の所作やマナー指導、いざこざの解決などなど──。

 だが、オレは知っている。
 こいつは虫も殺さない柔和な紳士のふりをしているが、実際は憎たらしい虫を一匹殺すためなら山の一つや二つ焼き払ってもいいと考えているクズ野郎だ。

 もっとも、そんな気質でなければ『ゴミ箱』と呼ばれるうちの寮の長なんてつとまらないだろう。

 どこからかテルを連れてきたのも、なにか考えがあってに違いない。

「申し訳ないが、あの子犬はいろいろと複雑なのだ。私の口から話すわけにはいかなくてね」

「べっ、別にぜんぜん、き、気になってねーし」

「人をバカ呼ばわりしたわりには嘘がヘタだな。……まあ、そこがキイチの素晴らしいところだ。昔からまったく成長が無い」

「ちっとも褒めてねぇだろ」

「褒めているさ、腹の底からね」


 ツゲはフッと鼻で笑うと、長い腕を伸ばしてオレの肩に手を回してきた。
 そのまま距離を縮めるように引き寄せられると、ローズマリーの清涼感のある香りが鼻先をくすぐる。

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