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3 薔薇の園
3-3 ツゲ
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「──ごきげんだな、キイチ」
「うおっ!?」
危うくベンチから転げ落ちそうだった。
オレの腕をぐっとつかんで引き止めたのは、ゆったりとした気品のある笑みを浮かべた男。
面長でシャープな輪郭、後ろで一つ結びにした長いブロンドヘアー、すらりと長い手足。全体的に棒っぽいシルエット。
「驚かすなよ、ツゲ」
「すまない。いつ話しかけるべきなのか迷ったのだ。ひとりでずっとニヤニヤしているものだから気色悪くてね」
「はいはいはい、すまんな。キショくてよ」
ツゲは、オレの悪友。
入学初日からの長い付き合い。
だからこそ分かる。
コイツはオレが驚くのをたのしむために姿を消して近づいてきたに違いない。
気配を悟られないようにわざわざ術を使って。ご苦労なことだ。
「……」
ツゲはなにか言いたそうに細い首を突き出し、顔をのぞきこんできた。
「なんだよ。気色悪いんだろ? 見んじゃねぇよ」
そっぽを向いたところでムダなのは分かっている。高貴な宝石のような深紫色をした瞳は、なにもかもを見透かそうとする。
逆アーチを描く下まつ毛が官能的に揺れる度、オレの背筋はぞくりと震える。目のやり場に困る。
「うおっ!?」
危うくベンチから転げ落ちそうだった。
オレの腕をぐっとつかんで引き止めたのは、ゆったりとした気品のある笑みを浮かべた男。
面長でシャープな輪郭、後ろで一つ結びにした長いブロンドヘアー、すらりと長い手足。全体的に棒っぽいシルエット。
「驚かすなよ、ツゲ」
「すまない。いつ話しかけるべきなのか迷ったのだ。ひとりでずっとニヤニヤしているものだから気色悪くてね」
「はいはいはい、すまんな。キショくてよ」
ツゲは、オレの悪友。
入学初日からの長い付き合い。
だからこそ分かる。
コイツはオレが驚くのをたのしむために姿を消して近づいてきたに違いない。
気配を悟られないようにわざわざ術を使って。ご苦労なことだ。
「……」
ツゲはなにか言いたそうに細い首を突き出し、顔をのぞきこんできた。
「なんだよ。気色悪いんだろ? 見んじゃねぇよ」
そっぽを向いたところでムダなのは分かっている。高貴な宝石のような深紫色をした瞳は、なにもかもを見透かそうとする。
逆アーチを描く下まつ毛が官能的に揺れる度、オレの背筋はぞくりと震える。目のやり場に困る。
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