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2 赤い雫
2-7 平気です
しおりを挟む「平気です! 自分が半人前なことはよく分かっています。だからこそ先輩を目標にして鍛えたいんです。ぼくは何があっても白魔道士になりたいから!!」
まっすぐすぎる瞳に照らされて、オレの心臓は強く震えた。
テルは本気だ。
この学園に入って白魔道士になることが半ば確定している貴族の坊っちゃん達とはわけが違う。
そして、オレ自身も繰り返す日々のなかで心がすっかり濁りつつあったと気づいた。入学したての頃のやる気や情熱が胸の奥からよみがえってくる。
オレが体を鍛えている理由──。
誰よりも強靭な魔道剣士にならなければいけないのだ。モンスターに幾度となく襲われ、その度に涙にくれている故郷の村の力になるために──。
昨日まではただ回数をこなすだけになっていた腕立て伏せ。
だが、テルが隣にいるだけでとても身が入った。
とはいえテル本人は、細っこい腕で床に手をついて足を伸ばしただけですでにぷるぷる。限界超突破。
「ひっ……ひ、ぁ……ぐっ! あ、ア」
しんどそうにあえぐばかりで1ミリも動けない。細いアゴの先から流れ落ちていくのは苦痛の脂汗か、絶望の冷や汗か。
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