真っ白子犬の癒やし方

雨宮くもり

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1 白い子犬

1-6 器量良し

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 オレが色々さぐっている間、テルは部屋の真ん中に突っ立ったまま在所なさげにキョロキョロしていた。
 「座ってろ」と空きベッドのほうにうながしてみたが、ためらっている。

 そりゃあ、今日初めて会ったヤツのベッドに触るのは気が引けるか──。


「すまん、茶葉切らしてた。炭酸水は飲めるか?」

「はいっ! 大好きで──いやっ、あのっ、……全然、お、おかまいなくっ……!」

 本音と遠慮がパタパタくるくる。絵に描いたようなテンパりよう。まだ緊張しているらしい。

 食事用のイスを居場所として差し出すと、テルはよじ登るようにして座った。
 オレの座高に合わせたイスは小柄な彼には高すぎたらしい。つま先が床につかずにぶらぶらしている。

 生まれたての子犬が塔のてっぺんに置き去りにされたみたいだ。


「ふふっ」

「な、なにかおもしろいことでも!?」

「いやいや、すまん。お前かわいいなぁって思ってさ」

 
「……っ!」

 かわいいと言われて嬉しがる男子はいないと思う。だが、テルは白い貝殻のようなまつ毛とブルーの目を見開き、唇をぎゅっと真一文字に噛んだだけだった。

 言われ慣れているのかもしれない。
 それほどの器量がこいつにはある。

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